2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H02836
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
中村 暢文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60313293)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 発電装置 / イオン液体 / 下限臨界溶解温度 / 再生可能エネルギー / 熱電変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体-水混合系には、高温では二層で、低温では一層になる下限臨界溶解温度(LCST)型の相挙動を示すものがある。LCST型の変化は僅かな温度変化で起こり、系中に溶解した無機塩の濃度変化をもたらす。この挙動を利用し、塩濃度差により発電する混合エントロピー電池(ME B)を我々が発明した。本研究の目的は、ある種のイオン液体-水混合系がLCST型の相挙動を示す要因を実験的に整理すること、および、この混合系を電解質とするMEBの出力向上である。本年度は、水とLCST型の相挙動を示すイオン液体を作製し、それらの相挙動を調べた。数種のイオン液体に塩の濃度を変えて溶かした溶液を作製し、まずは相転移温度の変化を評価したところ、すべてのイオン液体において NaCl の添加量を増やしていくにつれて相転移温度は低下した。これは、無機塩の塩析効果によるためであると考えられる。 イオン液体としてTetrabutylphosphonium p-toluenesulfonate([P4444][TsO]) にNaClを添加することで、LCST 型相転移挙動を示す[P4444][TsO]/NaCl 水溶液を調製した。この溶液は 32℃で LCST 型相挙動を示した。さらに、この溶液が相分離した際の上層となる位置に 電極を挿入し、セルを作製した。このセルの電力密度は19.1 nW cm-2であり、このセルでまずはMEBとして働くことをまずは示すことができた。さらに、LiClなどに添加塩と電極を変えても発電可能であることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最適な電解質の開発としては、水-イオン液体混合溶液(tetrabutyl-phosphonium 2,4,6-trimethylbenzenesulfonate ([P4444][TMBS]))(重量比1:1)にLiClを溶解させた系よりも優れたTetrabutylphosphonium p-toluenesulfonate([P4444][TsO]) にNaClを添加した系を見出すことができた。 より良い性質を示すイオン液体を見出す必要があるものの、ある程度のデータの蓄積が行えた。 電極の作製については、正極として既存のLiFePO4/FePO4、Na4Mn9O18/Na2Mn5O10などの電極について、作製法、評価法を確立することができた。負極についてはAgCl、炭素電極について評価し、やはりAgCl電極が良好であったが、イオン液体によって影響を受けている可能性が示唆されたため、更なる検討が必要である。 検討した電解液と作製した電極を用いてセルを組み、わずかな温度変化による相変化のみで塩濃度差を生じさせ、海水と淡水を利用した MEB の時と同様の方法でまずは電力密度を出力できることを示せたことは大きな成果である。 新型コロナウイルス感染症の拡大のため、結果を国際会議などで報告する予定であったが、国際会議が中止されたり、延期されたりしたため、次年度に繰り越しせざるを得ない状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
電解質として水-イオン液体混合溶液(tetrabutyl-phosphonium 2,4,6-trimethylbenzenesulfonate ([P4444][TMBS]))( 重量比1:1)にLiClを溶解させたものに加え、新しく見出したTetrabutylphosphonium p-toluenesulfonate([P4444][TsO]) にNaClを添加した系について、引き続き電池としての性能を詳細に評価する。また、LCST挙動を示すことがわかっているその他のイオン液体―水混合系についてのLCST挙動の評価と、塩添加の効果について詳細に調べる。 電解質としては、前年度整理した電解質溶媒に引き続き、新しいイオン液体を合成し、相挙動の検討を行う。それぞれのイオン液体を用いたイオン液体―水混合系について、相転移温度や相転移の前後でのLi+イオンとCl-イオンの活量変化について調べる。塩添加の効果、水との混合比の効果を調べる。 電極については、可能であれば電極面積を上げる方策について検討を開始する。これによって、セルの出力の向上を目指す。 セルの形状をデザインし、まずは電池出力を評価する。どのような形状のセルにし、電極の配置をどのようにするかを、実際に出力特性などを調べながら検討し、問題点の洗い出しを行い、改良方法について見当を付ける。さらに、電池サイズを極力小さくするための電極の配置の検討を行う予定である。
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Research Products
(7 results)