2021 Fiscal Year Annual Research Report
イオン伝導相関の制御によるLiイオン輸率を1とする電解液の創出
Project/Area Number |
20H02837
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
上野 和英 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30637377)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | Liイオン輸率 / 溶融Li塩錯体 / イオン運動相関 / イオン伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、溶融Li塩錯体中の電気化学的Liイオン輸率およびイオン運動相関について、アニオン依存性、希釈溶媒依存性を精査した。異なるアニオンを有するグライム系溶融Li塩錯体では、Liイオン輸率はアニオン構造に強く依存し、会合性の高いアニオンを用いるほどLiイオン輸率が高くなることを実験および濃厚電解液理論より明らかにした。特に、トリフルオロ酢酸アニオンを有するグライム系溶融Li塩錯体は0.93という高いLiイオン輸率を示すことが分かった。しかしながら、会合性アニオンから成る溶融Li塩錯体では、イオン伝導性が著しく低くなり、Liイオン輸率とイオン伝導性のトレードオフが確認された。濃厚電解液理論に基づき、高いイオン伝導性と高いLiイオン輸率の両立を可能とする条件を提示した。イオン伝導性の増加を狙い、希釈溶媒を加えた溶融Li塩錯体のLiイオン輸率とイオン運動相関を調査した。Liイオン輸率およびイオン運動相関は希釈溶媒の極性、すなわち溶融Li塩錯体のLiイオン溶媒和構造の変化の有無と関係があることを明らかにした。高いLiイオン輸率を示すスルホラン系溶融Li塩錯体を非配位性の溶媒で希釈した場合、イオン伝導性は増加するものの、Liイオン輸率が低下した。分光学的実験とイオン運動相関の分析により、非配位性希釈溶媒添加によって、スルホラン系溶融Li塩錯体中の特異なLiイオン架橋構造が断片化され、効率的なLiイオン輸送が阻害されることが原因と分かった。さらに、高いLiイオン輸率を示す可能性がある液体電解質として、Li塩溶融塩およびLiイオン液体の検討に着手した。Li塩溶融塩ではLiイオン輸率がほぼ1となることを確認した。一方、Liイオン液体のLiイオン輸率は対アニオン構造によって大きく変化することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初から予定していた液体電解質のLiイオン輸率およびイオン運動相関の精査を系統的に行うことで、Liイオン輸率を支配する化学的因子を明らかにすることができた。これに基づき、高いイオン伝導性と高いLiイオン輸率の両立を可能とする条件が明確化された。さらに、当初の予定に無かったLi塩溶融塩およびLiイオン液体の評価を進めたところ、Li溶融塩が極めて高いLiイオン輸率(~1)を示す液体電解質であることを確認し、本研究における評価対象を分子性溶媒を含む希釈および濃厚電解液から溶媒を全く含まないLi塩溶融塩およびLiイオン液体へ拡張した。これにより、高Liイオン伝導性液体電解質の開発への新たな道筋を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までに明確化された条件を基に、高いイオン伝導性と高いLiイオン輸率の両立を可能とする液体電解質を実証し、この電気化学特性を評価するとともに、これを電解質に用いたLiイオン電池の充放電特性を調べる。これより、高いLiイオン輸率を示す液体電解質設計指針を確立する。更に、今後の研究展開として、Li塩溶融塩およびLiイオン液体の高性能化に必要な条件を検討する。
|
Research Products
(16 results)