2020 Fiscal Year Annual Research Report
軽元素カチオン置換に基づく中低温作動プロトン伝導体の創製
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20H02841
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松井 敏明 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90378802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹入 史隆 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (20824080)
室山 広樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (40542105)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロトン伝導体 / 固体電解質 / イオン交換 / カチオン伝導性セラミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)イオン交換可能な材料としてLISICON系材料に着目した。中でもLi14Zn(GeO4)4はLi4GeO4を母構造にZnが固溶した系の中で最も高い伝導性を示すことから、この材料に対してLi+/H+イオン交換を試みた。希薄な酢酸水溶液中でLi14Zn(GeO4)4をイオン交換することで、格子間位置に存在する可動Li+イオンの全量をプロトンに置換することができた。また、イオン交換体の結晶性は少し低下したが、イオン交換前の母構造を維持していた。得られたイオン交換体粉末に焼結処理を施すことで緻密なペレットを容易に得ることができたが、X線回折測定の結果から副生相が生成することが明らかとなった。このようにして作製した固体電解質は、粒界成分の抵抗が非常に大きくイオン伝導度は低かった。一方、バルク成分のイオン伝導度は高かったことから、副生相の生成抑制がイオン伝導度の向上に不可欠であることが示された。次に、原料であるLi14Zn(GeO4)4の水素雰囲気下における化学的安定性を評価した。水素気流中で昇温還元測定を実施したところ、600 ℃以上で水素の消費が認められた。さらに、100%水素下でアニールすると結晶性が少し低下する傾向が見られた。将来、燃料電池や水蒸気電解セルとしての用途展開を考えると、水素耐性の獲得が必要となることが明らかとなった。 (2)希薄酢酸水溶液中でイオン交換処理した試料の電気化学特性評価を実施する際に、電極としてPtの使用を試みた。しかし、両物質間での反応が認められ、使用できないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の重要な成果は、既報では明らかにされていなかった新しい知見が得られたことにある。具体的にはLi14Zn(GeO4)4を例に、Li+/H+イオン交換処理によるプロトン導電性固体電解質材料の開発課題を初めて明らかにした。これによりLISICON系材料については、イオン交換条件(手法を含む)の見直し、電解質と電極の両立性および還元雰囲気下における化学的安定性の確保など、固体電解質を用いて電気化学デバイスを構築するための要件を基礎的に収集することの重要性が示され、次年度以降に向けての研究展開方針を定めることができた。イオン交換条件の見直しについては、既に取り組みを始めており、得られたイオン交換体の基礎物性評価を中心に展開して行く予定である。また他の課題についても、改良イオン交換法の開発を待つことなく同時並行で展開することが可能であり、最終目標に向けて概ね順調に進捗していると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果により、次年度以降に向けての開発課題が明らかとなった。特に、LISICON系材料に対するイオン交換条件(手法を含む)の改良・探索は、イオン交換体の化学的・熱的安定性と密接に関連していると予想されため、重点的に取り組むことで適切な条件を導き出す。将来的には、LISICON系材料に留まらない展開も見据える。また、電気化学的な評価に対しては、安定な電極が必須であり、応用先である燃料電池などの固体電気化学デバイスの電極反応過電圧にも大きく影響することから、電解質との両立性評価を中心に電極候補材料の選定を同時並行で実施する。
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