2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20H02851
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
石川 亮佑 東京都市大学, 付置研究所, 准教授 (50637064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪井 望 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70217371)
星 裕介 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (70748962)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原子層材料 / 薄膜太陽電池 / TMDC / グラフェン / 多接合太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の概要は、「原子層材料を用いた究極の薄膜太陽電池の開発」である。本研究課題の特徴は、層数によってバンドギャップが異なることが知られる原子層材料を積層化することで多接合太陽電池を作製することにある。具体的には①原子層ヘテロ接合太陽電池の動作原理の解明、②原子層薄膜の大面積合成法の確立、③多接合化による高電圧セルの開発の課題を解決することによって究極の薄膜太陽電池を開発し、IoTデバイスやウェアラブルデバイス応用など多様性に適応するために軽量でフレキシブルかつ意匠性にも優れた太陽電池を実現する研究である。 本年度は①WSe2/MoS2ヘテロ構造において、各層のねじれ角の異なる試料を作製し、光学特性評価をおこなった。各層のねじれ角の変化により、WSe2中の正孔とMoS2中の電子が束縛された層間励起子の束縛エネルギーが変化することを明らかにした。また、時間分解PL測定においても、ねじれ角に依存して、各層の励起子発光寿命が変化することを発見した。これらの結果から、層間のキャリア輸送と結晶のねじれ角に強い相関があることを示した。②反応性スパッタ法によるMoS2薄膜作製において、低CS2反応性ガス圧力条件及び窒素雰囲気でのポスト熱処理により、MoS2に起因するラマン散乱ピークの波数値がバルク結晶の報告値に近づくと共に半値幅が減少した事実は,残留応力の低下や格子欠陥の減少を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①原子層ヘテロ接合太陽電池の動作原理の解明については、GaSe/MoSe2の微小ヘテロ接合サンプルを用いて太陽電池特性の光照射強度依存性を評価して投稿論文にまとめた。また、WSe2/MoS2ヘテロ構造については、低温PLスペクトル測定、室温時間分解PL測定を行うことで、各層の結晶のねじれ角が、層間励起子形成、層間キャリア輸送に強い相関があることを明らかにした。これらの成果を国際会議(E-MRS2022 spring meeting)にて発表する。また現在、投稿論文の執筆を進めている。 ②原子層薄膜の大面積合成法の確立については、プラズマ硫化法によるMoS2薄膜の成長においてCS2ガス分圧とプラズマパワーが膜質に大きく影響することを見出した。また、新潟大においては反応性スパッタリング法によるMoS2薄膜において、CS2ガス圧力変化及び窒素雰囲気熱処理により結晶性が制御できることを明らかにした。 ③多接合化による高電圧セルの開発については、光学設計のための光学シミュレーション環境を整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①原子層ヘテロ接合太陽電池の動作原理の解明については、キャリア密度変調が可能なTMDCを光吸収層とするp-i-n構造を作製し、キャリア密度変化が光生成電流および、光起電力に与える影響を調べる。現在は、外部電場印可によりTMDC内のキャリア密度を局所的に変調させる技術を用いてp-i-n構造を形成しているが、CVD成長膜への不純物ドーピングによるキャリア密度制御についても検討を進める予定である。 ②原子層薄膜の大面積合成法の確立については、各種製膜法による製膜条件を最適化することで、原子層薄膜の品質を向上していく。また、成長パラメータを制御しやすく、比較的低温で成長可能なMOCVD法による成長にも着手する。 ③多接合化による高電圧セルの開発については、光学シミュレーションを立ち上げて、本研究で最終的に目指す原子層材料から成る多接合太陽電池の光学設計を行う予定である。
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