2020 Fiscal Year Annual Research Report
極限環境下に生きる光合成微生物の生存戦略の解明―その分光学と構造生物学的研究
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20H02856
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
大友 征宇 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10213612)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成細菌の最もコアな部分である光捕集反応中心超分子複合体(LH1-RC)は、特異な分光学的性質とユニークな立体構造をもつ。本研究では、様々な極限環境下に生きる光合成細菌(好熱、好冷、好塩、好アルカリ、好酸など)を用いて、(i)光捕獲と光電変換を司るLH1-RC複合体の特異な分光学的挙動の特定、(ii)過酷な生育条件にも耐えうる光合成膜とLH1-RCの構造安定性の評価、(iii)これらの分光学的特性と構造安定性をもたらす構造的要因の原子レベルでの解明を目的とする。本研究で得られる知見から、より実用性の高い高効率の集光アンテナと光電変換素子の作成ならびに人工光合成システムの構築に対して根拠となる設計指針を与える。 ドイツ北部バルトルム島沿岸から採取された好塩菌Thiorhodovibrio strain 970(塩濃度370 mM)と、ニュージーランドの温泉から単離された好熱菌Allochromatium tepidum(43C)由来のLH1-RCは通常のものよりそれぞれ約80 nmと15 nm長波長側に吸収極大をもつ。前者はBChl aをもつ既知の光合成生物の中で最長の吸収極大を示す。両者ともその原因はCa2+によるものであることが最近明らかになった。Ca2+の結合部位と周辺タンパク質の構造変化を解明するために低温電顕による両菌体のLH1-RCの構造解析を行った。Trv. 970由来のLH1-RCについてCa2+結合部位を含む立体構造を決定した。一方、BChl bをもつ好熱光合成細菌Blastochloris tepida(43C)由来のLH1-RCについて、各種微量熱量測定と分光学的手法を用いてその熱耐性機構を分子レベルで明らかにした。これらの成果は国際学術誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Trv. 970由来のLH1-RCの構造解析とBlastochloris tepidaのLH1-RCの熱耐性機構の解析が完了し、これらの成果をまとめた学術論文を発表した。Allochromatium tepidumのLH1-RCの構造解析も進んでおり、完成の目処が付いた。これらのことを総合的に判断した結果、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
Allochromatium tepidumのLH1複合体には複数種類のポリペプチドが存在しているため分子モデルの構築と構造決定に予想より長い時間を要する。まずこれを完成してその成果の公表に向けて取り組む。次に、Blastochloris tepida由来のLH1-RCの構造解析を行う。その後、他の極限環境下に生息する光合成細菌のLH1-RC複合体を単離し、その特異な生化学的性質と分光学的挙動をもたらす構造的要因を特定する。
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Research Products
(6 results)