2022 Fiscal Year Annual Research Report
極限環境下に生きる光合成微生物の生存戦略の解明―その分光学と構造生物学的研究
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20H02856
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
大友 征宇 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10213612)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成細菌の最もコアな部分である光捕集反応中心超分子複合体(LH1-RC)は、特異な分光学的性質とユニークな立体構造をもつ。本研究では、様々な極限環境下に生きる光合成細菌(好熱、好冷、好塩、好アルカリ、好酸など)を用いて、(i)光捕獲と光電変換を司るLH1-RC複合体の特異な分光学的挙動の特定、(ii)過酷な生育条件にも耐えうる光合成膜とLH1-RCの構造安定性の評価、(iii)これらの分光学的特性と構造安定性をもたらす構造的要因の原子レベルでの解明を目的とする。本研究で得られる知見から、より実用性の高い高効率の集光アンテナと光電変換素子の作成ならびに人工光合成システムの構築に対して根拠となる設計指針を与える。 本年度はこれまでモデル紅色光合成細菌の一つとして用いられてきたRhodobacter capsulatus由来の光捕集反応中心複合体LH1-RCの構造を決定した。他の種と異なり、LH1サブニット数が10個と最小構成数となっており、理論的には8個のサブニット数で光合成が可能であることを支持する結果となっている。さらに、本種ではサブユニットが会合時のカギとなるPufXの形が大きく異なるうえ、2021年に発見した二量体を安定化するProtein-Uも存在しないことから、単量体として機能することが立体構造上からも明らかになった。そのため二量体を形成することはなく、本当の意味で極小サイズの光合成ユニットであることを明らかにした。この成果は国際学術誌(Nature Communications 14, 846; 2023)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は紅色非硫黄細菌Rba. sphaeroidesの二量体LH1-RCの構造を決定し、その後同じファミリーに属するRba. capsulatusのLH1-RCの構造解析を開始した。今年度はさらに、紅色硫黄細菌のモデルであるAlc. vinosum由来のLH1-RC複合体の構造解析も行ってきた。現在その成果をまとめる学術論文の発表に目処がついたことから総合的に判断した結果、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで常温の紅色非硫黄と硫黄細菌由来のLH1-RC複合体の構造解析を行った。今後極限な環境下に生息する高度好塩・好熱・好アルカリ菌由来の光捕集複合体の構造を明らかにして行きたい。これらの菌体には培養が困難で、成長が遅いものが多く、さらにタンパク質複合体の単離精製が難しい場合が想定される。本研究はこれらの未知領域に踏み込み、極限環境下に生きる微生物の生存戦略の解明に挑む。今後これらの成果の公表に向けて取り組み、さらに新しい研究への展開を計っていきたい。
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Research Products
(3 results)