2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H02858
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
樫田 啓 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30452189)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人工核酸 / SNA / キラル増幅 / 生体物質検出 / CPL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では我々が開発した人工核酸であるセリノール核酸(SNA)を利用したキラル増幅系の開発、及びそれを利用した生体分子検出を目指している。これまでにSNAの配列設計によってアキラルなナノ構造体を調製可能である点、更にこのナノ構造体に対してキラル核酸を添加した際に塩基部分の円二色性(CD)シグナルが大幅に増大することを明らかにしている。すなわち核酸の二重鎖形成を利用したキラル増幅系の開発に初めて成功した。これらの成果はChem. Sci.誌に発表された。 本年度はSNAの化学修飾による機能化について検討を行った。具体的にはSNAのウラシルの5位に蛍光色素(ピレン)を結合させ、一次元ナノ構造体を調製した。このナノ構造体に対し少量のキラル核酸(トレオニノール核酸)を添加したところ、塩基吸収部位に大きなCDが観測された。このことは、SNAナノ構造体によって核酸のキラリティが増幅されたことを示している。更に、色素部分にもCDが観察されたことから、核酸のキラリティが色素部位にも伝播したことが分かった。また円偏光発光(CPL)を測定したところ、ピレンのエキシマ―波長領域にCPLが観察された。更に、添加する核酸のキラリティに応じてCDやCPLのシグナルが反転することも見出した。 これらのことはSNAナノ構造体によって核酸のキラリティが色素部位CDやCPLに変換されたことを示している。この系を利用すれば様々な生体分子をキラリティに基づいて検出することが期待できる。これらの成果は現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では3か年の研究期間において、1)これまで開発したキラル増幅系の機能化、及び2)それを利用した生体物質検出について研究を行う予定である。 このうち1)については初年度において大部分を達成することが出来た。すなわち、蛍光色素でSNAを修飾することによって、CDシグナル波長の制御が可能であることを明らかにした。また、CPLも発現することが分かった。これらの結果はSNAナノ構造体を利用することで、生体分子のキラリティを人気のキロプティカルシグナルに変換可能であることを示唆している。 移譲のことから本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間2年目となる次年度は開発したキラル増幅系の更なる機能化、及びそれを利用した生体分子検出への展開を図る。キラル増幅系の機能化については、四分岐構造を導入することによるキラル増幅系の二次元化を目指す。また、核酸配列を工夫することによりキラル増幅効果の増大を目指したい。生体分子検出については天然核酸検出を目指す。具体的にはナノ構造体に対し、DNAやRNAを添加することによってキラリティを増幅させることを目指す。更に、蛍光色素を導入することによるシグナル変換についても検討を行いたい。
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