2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development and utilization of the model system of disease cell for quantitative analysis of nucleic acid structures in cells
Project/Area Number |
20H02864
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
建石 寿枝 甲南大学, 先端生命工学研究所, 准教授 (20593495)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 細胞内環境評価系 / 核酸構造 / 液滴 / 神経変性疾患 / リピートRNA / 熱力学的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、神経変性疾患細胞内の毒性に関わる液滴中にRNAが含まれることが明らかとなったが、液滴中のRNAの役割は不明である。核酸は、周囲の化学環境に応じて多様な高次構造を形成する。そのため、疾患の進行に伴う細胞内の環境変化が核酸の構造を変化させ、ペプチドとの相互作用を制御し、さらに細胞毒となる液滴(凝集体)の形成を制御している可能性がある。本研究では、下記の研究を段階的に遂行する。 (A)新規の細胞内環境評価系を開発し、細胞内での液滴形成機構を解明する(知る研究)。 (B)核酸構造を制御する人工分子を開発し、液滴の新規制御法の開発する(活用する研究) 上記の研究により、細胞内での液滴形成に関する核酸構造の重要性を提唱し、細胞内の液滴の関わる生体反応の新たな調節機構の解明と、その知見を活用した化学的生体反応制御技術を確立する。 本年度は、中性高分子を用いて細胞内の分子環境を模倣した細胞内分子環境評価系を構築した。この評価系において、二重らせん構造、四重らせん構造に及ぼす分子環境の効果を解析した結果、二重らせん構造は不安定化し(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 117, 14194-14201 (2020))、四重らせん構造は安定化することを見出した(Biochemistry, 59, 2640-2649 (2020)、 Nucleic Acids Res., 48, 3975-3986 (2020))。さらに、神経変性疾患に関わるリピートRNAの構造が液滴形成に及ぼす影響を解析した結果、リピートRNAが四重らせん構造を形成すると液滴の形成が促進されることが示された。さらに、このような液滴形成の促進には溶液の誘電率の低下による四重らせん構造の安定化が重要であることも示された(Biochemistry, 59, 1972-1980 (2020))。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、中性高分子によって細胞内分子環境が核酸構造に及ぼす影響を解析した。その結果、二重らせん構造や四重らせん構造に及ぼす分子環境の効果を明らかにできた。特に、経変性疾患に関わるリピートRNA(rG4C2リピート)が形成するR-ループ内で形成するようなRNA/DNAハイブリッドの構造を生理学的溶液中で予測できるパラメータを開発できた(Nucleic Acids Res., 48, 12042-12054 (2020))。さらに、液滴形成に及ぼすRNAの構造の重要性を示唆する結果を見出し、さらに、RNAとペプチドの相互作用を解明する研究に着手することができた。 そのため、本研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、疾患細胞モデルとなるイオン溶液(例えば低K+、高Na+溶液など)を最適化し、疾患モデル環境評価系を構築する。一般的に、液滴を形成する重要な相互作用として、π-πスタッキング相互作用やカチオン-π相互作用が知られている。本研究では、ALS/FTD患者の細胞内で細胞毒の原因となるペプチド(poly-GA, poly-GPペプチド)、ハンチントン病などに関わるr(CAG)リピートおよびpoly-Qペプチドなどの10種類のRNA配列とペプチドの相互作用を分光光度計による懸濁率測定、ダイナミック光散乱高度計、等温滴定型カロリメトリー、分子動力学計算等によって解析する。また細胞内環境評価系においても凝集体の形成を、凝集体に特異的に結合する蛍光ブローブによって視覚化し、顕微鏡にて解析する。得られた実験結果を細胞内の結果と比較しデータベース化を行い、細胞内分子環境評価系を最適化する。 さらに、試験管内で重要であることが予想された相互作用が、細胞内でも重要か否かについて解析を行う。まずモデル細胞として、マウスの正常細胞(NIH3T3)や、カリウムイオンの濃度が異なると推察されるMCF-10A, MCF-7、MDA-MB-231、および細胞内のイオン環境を制御しているイオンチャネルをノックダウンした細胞株を用いて、細胞内のイオン濃度変化に応じた核酸の構造や液滴形成を解析する。構造体の形成は共焦点レーザー顕微鏡や、蛍光プレートリーダで行う。また、細胞内と試験管内の結果の相関を見積もり、溶液のどの物理化学的パラメータ(イオン強度、水や溶質の活量、誘電率、粘性、表面張力など)が核酸の構造や液滴形成を決定する因子であるかを考察する。
|