2022 Fiscal Year Annual Research Report
Divergent synthetic strategy of natural products for the development of lead compound of a novel type of drugs
Project/Area Number |
20H02867
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
早川 一郎 日本大学, 文理学部, 教授 (20375413)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩月 正人 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (70353464)
照屋 俊明 琉球大学, 教育学部, 教授 (90375428)
堤 大洋 日本大学, 文理学部, 助手 (20961618)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 多様性指向型全合成戦略 / 天然物創薬 / 骨代謝調節活性 / 抗マラリア活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は1)骨粗鬆薬のリード化合物として期待できるSB-203207の『立体化学多様性』指向型合成を目指し,アザインデン骨格の構築を検討した結果,イソシアネート存在下でオゾン酸化を行い,アセタール含有ウレタンを構築した後,ウレタンの除去によって生じるアルデヒドを分子内のアミンでトラップすることをワンポットで行うことで,全炭素数を揃えたピペリジン環を構築できた,2)クロロキン耐性マラリアに有効なストリキノスアルカロイドであるイソレツリンの『構造多様性』指向型合成においては,分子間/分子内SN2反応をワンポットで行う環化反応を開発し,ピロリジン環の構築法を確立した.このピロリジン環の合成は脱離基の種類により環化反応性が大きく異なる興味深い知見が得られた.前駆体としてジブロモ体を用いるとE2脱離体も副生したが,この副生成物は水銀触媒を用いれば,ピロリジン環が得られることが知られているため,問題はない,3)がん細胞を特異的にアポトーシスに誘導するテルペンドールEの『構造多様性』指向型合成を目指し,位置選択的C-H酸化反応をモデル化合物を用いて検討した結果,bioconversionや酸化剤であるTFDOを用いた反応は不調であったが,ルテニウム錯体と過酸化水素を用いたC-H酸化反応を行うと,望みのgem-ジメチル基の隣接位でC-H酸化反応が進行することが明らかになり,テルペンドールEの構造多様性合成の確立に大きく前進した.この反応条件はこれまでに報告されている鉄錯体を用いた例よりも効率の良い反応条件である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SB-203207の合成については,母骨格であるアザインデン骨格の構築を進め,全炭素数を揃えたピペリジン環を構築することができたため.すなわちイソシアネート存在下でオゾン分解を行うことでアセタール含有ウレタンを構築し,炭酸セシウムを用いた加水分解を行うと系中でアルデヒドが生成し,これをアミンがトラップすることによりピペリジン環をワンポットで構築した. イソレツリンの合成については,昨年までの方針を変更したことが奏功し,別プロジェクトで合成した中間体からワンポット分子間/分子内SN2反応によるピロリジン環構築を達成することができ,全合成と立体異性体フォーカストライブラリー構築に向けて大きく前進したため.この反応は前駆体であるジメシラートの立体選択的合成に少し問題を残しているが,昨年度の検討で改善の方向性が見えてきたので,最適化を進め,今年度早々に反応条件を確立する.本反応については論文化する予定である. テルペンドールEの合成においては,モデル化合物であるスクラレオリドを用いてルテニウム錯体と過酸化水素によるC-H酸化を行ったところ,目的のgem-ジメチル基の隣接位に位置選択的に酸素官能基を導入することができたため.この反応条件はこれまでに報告されている鉄錯体を用いた例よりも効率の良い反応条件である.モデル化合物で反応条件を確立できたため,今年度はインドールを含む前駆体で反応を検討する.
|
Strategy for Future Research Activity |
SB-203207の合成については,全炭素数を揃えたピペリジン環を構築することができたが,炭酸セシウムによるウレタンの加水分解の収率が低い問題が残った.そこで,ウレタンのカルボニル基をLawesson試薬でチオカルボニル基へと変換し,ヨードメタンを作用させることによりウレタンの除去を検討する.この方法で収率が改善できれば,あとは官能基変換を残すのみであるので,全合成とライブラリー構築が一挙に達成できる. イソレツリンの合成については,新たに開発したワンポット分子間/分子内SN2反応によるピロリジン環構築の反応において,基質としてジブロモ体を使うとE2脱離反応が競合して収率が低かったが,ジメシラートを基質として用いると,E2脱離反応を抑制し,反応が円滑に進行することを見出した.しかし前駆体であるジメシラートの立体選択的合成がやや低収率であるため,この部分の改善を行う.また副生するE2脱離体については,水銀触媒を用いた環化反応を行うことにより,有効利用する.一方,全合成については構築したピペリジンのイソプロペニル基からアリルハライドへの変換法も確立することができたので,最終工程であるNs基の除去と分子内SN2反応をワンポットで進行させることによるストリキノス骨格の構築を行い,イソレツリンの全合成を目指すとともに,平行して進めている骨格を改変した天然物アナログライブラリーの構築も行う. テルペンドールEの合成においては,全合成にむけてインドールを含む分子のgem-ジメチル基の隣接位に位置選択的に酸素官能基の導入を行う.上述のように,ルテニウム錯体と過酸化水素によるC-H酸化を適用するが,電子豊富なインドール基を含むため位置選択性が低下する可能性がある.そこで,インドールの窒素部分を電子求引性の保護基を導入した基質を用いてC-H酸化を検討する.
|