2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of gene-directed caged compounds
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20H02882
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
古田 寿昭 東邦大学, 理学部, 教授 (90231571)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光スイッチ / ケージド化合物 / 遺伝子 / 抗菌薬 / 光薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究項目1:神経活動依存的に光活性化能を獲得する“Lock-and-Key”型ケージド化合物を設計して,記憶の光操作を実現するための要素技術の開発を目的にした。光反応効率の高いケージンググループであるBhc基の光反応性を適切な修飾により一時的にマスクする(Lock)。特異的な酵素(Key)の存在下でのみ外れるLockを設計すること で,Key酵素発現細胞内だけで光作動性のケージド化合物を合成できる。目的細胞にKey酵素の遺伝子で目印をつけることで,小分子性有機化合物であるケージド化合物の機能に細胞種選択性を付与できる。これを「遺伝子指向性」と名付けて,コンセプトの実証を試みた。p54 及び MAPK のアクチベーター,タンパク質合成阻害, アポトーシス誘導等の機能を有するアニソマイシンを用いて,遺伝子指向性ケージド化合物への変換を試みた。その結果,Key酵素存在下でのみ405 nm光で光活性化されるGal-Bn-Bhcmoc-anisoの開発に成功した。Gal-Bn-Bhcmoc-anisoを細胞に導入後,405 nm光を照射すると,Key酵素を発現する哺乳動物細胞だけにアポトーシスを誘導できることも明らかにした。さらに,複数のLock-and Keyペアを用いてケージドアニソマイシンを合成できることも見出した。研究項目2:ターゲティング可能なケージド薬剤の開発と光薬理学への展開を目的にした。薬剤として,ニューキノロン系抗菌薬を選択して,細菌種選択性を付与可能な多機能性ケージド化合物を設計・合成した。病原性細菌12種を用いて,合成したケージド抗菌薬の性能を評価したところ,ケージドの状態では抗菌活性が有意に抑制されていること,光照射で6管(2の6乗倍)以上抗菌活性が上昇することを確認した。さらに,クリック反応でビオチンなどの機能性部位を導入できることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目1では,当初の計画通り,Lock-and-Key型ケージド化合物のコンセプトを実証できたこと,遺伝子指向性ケージド化合物として働くことを哺乳動物細胞で確認できたこと,さらに,複数の酵素ー基質ペアを用いてLock-and-Key型ケージド化合物を合成できることを明らかにした。研究項目2では,ケージド抗菌薬を合成して,光照射によって抗菌活性を制御可能であること,さらに,細菌種特異性を付与する機能性部位を容易に導入できることを明らかにした。以上より,いずれの研究項目ともほぼ当初の計画通り,光薬理学実現のための要素技術を開発できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度までの研究で,遺伝子指向性ケージド化合物のコンセプトは実証できた。引き続き,培養細胞を用いる実験で有効性を検証する。以降の実験の成否を左右するパラメーターとして,ケージド化合物の細胞膜透過性,安定性,酵素との反応性,酵素の発現量が挙げられる。結果を分子設計にフィードバックして目的達成を図る。続いて,単離した臓器(ex vivo)でLock-and-Key 戦略の有効性を検証する。ショウジョウバエはGAL4エンハンサーの利用により,様々なパターンで任意の遺伝子を発現する系統が容易に手に入る。そこで,目的組織にKey酵素を発現する遺伝子組み換えハエを用いて,遺伝子指向性光制御のコンセプトを実証する。遺伝子を利用するターゲティングの第2のアプローチとして,外来遺伝子,細胞表面抗原,内在性因子を利用するターゲティング能を装備する。 抗がん剤としてパクリタキセル,ボリノスタットおよびドキソルビシンを選び,リガンド結合型ケージド化合物を合成する。哺乳動物培養細胞を用いて,目的細胞への集積性と光照射による選択的な細胞を誘導を検証する。
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Research Products
(3 results)