Outline of Annual Research Achievements |
2年目の本年度は、実験材料としてのイネの品種選抜においてイネの拡大版コアコレクション約200系統、インディカ200系統、aus200系統の、合計600系統を対象とし、イオンの転流の影響が大きいと考えられる止め葉(穂が出てくる直前に出てくる最後の葉)の葉身に焦点をあて、昨年度、8月の出穂期と10月の収穫期の2回に分けてサンプリングをした止め葉について、合計約6000点について、硝酸にて湿式分解の後、ICP-MSによる網羅的なイオン測定を進めた。測定対象とした元素は、B, Na, Mg, Al, P, S, K, Ca, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, As, Rb, Sr, Mo, Cd, Cs, Baであった。これらを一度の測定で完了するためのプログラムを構築して、測定を進めた。なお、Ni, Cd, Csについては検出限界以下になるサンプルが多かった。 まだ測定途中ではあるが、出穂期と収穫期での各元素について、品種を超えたイネとしての傾向の概要が以下のように見えてきた 。例えば、Mg, K,Ca, Pといった元素は比較的濃度が安定していた。多くのサンプルでKやPは出穂期の方が収穫期よりも濃度が高く、Caは逆に収穫期の方が出穂期よりも濃度が高いなど、これまで一般的に言われていた各元素の転流の特徴が現れた結果となった。なお、Mgは出穂期と収穫期の濃度が品種によって異なるなど興味深い結果も得られた。 一方で、AsやCdは特定の品種でのみ突出した検出が見られるなど、品種に応じた特徴も見られた。 なお、これまでのところ、ジャポニカ、インディカ、ausの3つの群において、それぞれ特徴ある元素動態は見られなかった。 他、確立した測定系を活用し、植物の葉の濃度を測定する共同研究も展開した。
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