2021 Fiscal Year Annual Research Report
イネのヒ素吸収・移行モデル構築による高温下での子実ヒ素濃度上昇機構解明と低減戦略
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20H02889
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松本 真悟 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (00346371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 圭介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (20549555)
須田 碧海 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 主任研究員 (20789573)
小葉田 亨 島根大学, その他部局等, 名誉教授 (60186723)
小林 和広 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (90234814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヒ素 / 水管理 / 高温 / 中干し / 気温 / 品種 / コシヒカリ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年に島根大学本庄総合農場内の圃場(1M塩酸抽出ヒ素濃度:1.8 mg kg、0.1M抽出カドミウム濃度:0.2 mg kg)で試験を実施した。出穂1週間後にビニル被覆しない区画を露地区とし、被覆した区画(約3㎡)を高温区とした。中干については、一般的な期間である8日間を慣行区とし、18日間に延長した場合を延長区とした。また、出穂前後に落水を行わない湛水区と2回落水する落水区を設けた。落水処理は出穂前後の3週間の間に4日間の落水を2回行うこととして、期間中の降雨1度につき落水期間を1日延長することとした。同期間の降水量ならびに、土壌の深さ10㎝の酸化還元電位(Eh)、体積含水率(TDR)および作土内水位を測定した。‘コシヒカリ‘を供試し、5月21日に移植、9月8日に収穫した。収穫した玄米は微粉砕した後に湿式分解し、玄米総ヒ素濃度をICP-MSにて測定した。 露地区に対して、高温区の日平均気温は1.7℃、6時から18時までの平均気温より算出した昼間気温は3.7℃高かった。生育期間中の降水量は中干の慣行期間で0mmであったが、延長期間に574mmの降水量があった。また、出穂前後の落水1回目の降水量は0mmであったが、2回目では227mmの降水量があった。中干期のEhは処理最終日で延長区が慣行区よりも約30mV上昇した。TDRはこれを反映し、延長区は慣行区よりも5%程度低下した。落水1回目のEhは落水区で上昇し、なかでも中干延長を経た落水区では400mV程度高く、より短期間でEhが上昇した。そのため,TDRは落水処理において、中干延長区が中干慣行区よりも8%程度低下した。玄米総ヒ素濃度は露地区に比べて高温区で有意に上昇した。中干延長区は中干慣行区よりも有意に高い玄米総ヒ素濃度を示した。一方、落水区の玄米総ヒ素濃度は湛水区よりも有意に低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの2年間でポット試験ならびに枠試験において,温度傾斜型チャンバーならビニルハウスを用いて設定した高温条件により,登熟期の高温がコメのヒ素濃度を上昇させることを確認した.そして,今年度はそれを圃場条件においても同様に高温がコメのヒ素濃度を上昇させることが明らかとなった.また,高温条件においても水管理及び鉄資材の施用はコメのヒ素濃度の低減に有効であることを明らかにした.さらに,これらの現象には品種間差があることを明らかにできた.以上より,本課題は当初の計画に対し,おおむね順調に推移していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はコメのヒ素蓄積における温度との関係をモデル化するために,以下の実験を行う. 1.穂培養法ータと登熟期の温度(24~32℃)との関係をモデル化する.また、止め葉節上下の茎中ヒ素濃度から止め葉節における穂へのヒ素移行の抑制,さらに高温による変化を明らかにし,本モデルにおける培養液から穂に移行するまでのヒ素濃度変化をモデルに組み込む. 2. 高温により玄米中のヒ素濃度は有意に増加するが,子実へのヒ素取り込み量(ヒ素量/穂)が高温によってもほとんど変化しなかったことから,登熟初期の水分移行がヒ素取り込みに関与している可能性があり,子実の水分変化とヒ素取り込み量との関係のモデル化を試みる.登熟期の子実の水分量とヒ素の取り込み量を登熟期の温度(24~32℃)の下で時系列に測定する.
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Research Products
(3 results)