2022 Fiscal Year Annual Research Report
窒素固定増強遺伝子によるマメ科作物の低炭素投入型への転換
Project/Area Number |
20H02890
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鈴木 章弘 佐賀大学, 農学部, 教授 (50305108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 啓史 佐賀大学, 農学部, 准教授 (40425541)
富永 晃好 静岡大学, 農学部, 助教 (50776490)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダイズ / 窒素固定 / 共生 / 根粒菌 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,申請者らが見出した窒素固定増強遺伝子(SEN1)に関して,窒素固定増強のメカニズムを理解することとそれを使ってダイズの生産性を向上させる(窒素肥料を削減する)ことである。今年度も昨年度に引き続き3つの小課題を遂行することによってそれらの達成を試みた。結果とともに以下に示す。 小課題1.ダイズの窒素固定増強遺伝子による肥料削減効果の検証:佐賀県におけるダイズ栽培時の適切な窒素量は10a当たり6 kgであるとされる。今年度は,佐賀大学において0.4 kg/10a,静岡大学において1.3 kg/10aの条件で,オリジナル品種のフクユタカと窒素固定増強型のエンレイ型(準同質遺伝子系統)を栽培した。その結果,エンレイ型の収量は,前者に関してはフクユタカ比で約1.14倍,後者は1.55倍を示した。しかしながら十分な窒素を含んだ条件ではオリジナル品種と比較して有意差が見られなかった。これらの結果は,本遺伝子の導入によって貧栄養条件では,収量の増加が見込めることを示しており,窒素肥料の削減につながるものと期待できる。 小課題2.ダイズの窒素固定増強遺伝子のリスト化と世界展開への準備:昨年までに,エンレイ型SEN1を持っているダイズ系統は日本のコアコレクションおよび世界のコアコレクションの一割程度に過ぎないことが判明していた。そこで,今年度はこの遺伝子を導入するダイズ品種を選抜するために,日本作物学会において今までの成果を発表し,農水省や地方自治体の研究者との意見交換を行い,導入するための大豆品種の選定を進めた 小課題3. SEN1タンパク質の機能解析:昨年度までは,既に作出済みのNILの根粒内の鉄含量について蛍光X線分析によってその含量を測定してきたが,今年度は根粒を灰化してフェロジン法によって測定を行った。その結果,昨年得られた結果と同じ傾向であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いずれの小課題においても,想定していたことがある程度達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
小課題1.ダイズの窒素固定増強遺伝子による肥料削減効果の検証:2022年度は貧栄養条件において,エンレイ型の収量の増加が観察されたことから,今年度もその再現性を確認する必要がある。 小課題2.ダイズの窒素固定増強遺伝子のリスト化と世界展開への準備:今年度は,あらたに窒素固定増強型SEN1を導入するダイズ品種を決定して,交配を繰り返すことによって本遺伝子を導入していく必要がある。 小課題3. SEN1タンパク質の機能解析:ミヤコグサのSEN1遺伝子に関して,鉄の輸送体ではなくモリブデンの輸送に関わっているとする結果が発表された。ダイズでは鉄の輸送体であるとする報告が見られるが,ダイズにおいてもモリブデンの輸送に関わっている可能性を探る必要がある。そこで今年度はNILの根粒におけるモリブデン含量の調査を行う。
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Research Products
(3 results)