2020 Fiscal Year Annual Research Report
Breeding of filamentous fungi producing citric acid with high efficiencies by the genome editing system
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20H02906
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
桐村 光太郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90195412)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Aspergillus niger / Aspergillus tubingensis / citric acid / CRISPR/Cas9 / genome editing / mitochondria / organic acid transport |
Outline of Annual Research Achievements |
クエン酸高生産糸状菌Aspergillus tubingensis WU-2223Lを供試菌としてゲノム編集技術を確立し、有機酸輸送体遺伝子の機能解析に応用した。 ゲノム編集技術の確立においては、CRISPR/Cas9システムのgRNA源をDNA断片としてCas9タンパクと同時にWU-2223L株の細胞に導入することでゲノム編集を容易に実現可能なことを明らかにした。gRNA源をDNA断片とすることで配列の改変や調製が容易になり、遺伝子の網羅的な機能解析に適したゲノム編集技術を確立しえた。 確立したゲノム編集技術を用いてクエン酸生産の場であるミトコンドリアに局在する有機酸輸送体タンパクをコードする遺伝子の機能解析を実施した。クエン酸輸送体CTPとCOCをコードする遺伝子の二重遺伝子ノックアウト株は通常の最少寒天培地上では著しい生育遅延を示した。また、液体培養ではクエン酸生産量が親株のそれと比較して98%減少し、CTPおよびCOC輸送系がクエン酸高生産糸状菌における主要なミトコンドリアのクエン酸輸送系であることを示した。現在はクエン酸生産条件下で転写が認められる8種のミトコンドリア局在型の有機酸輸送体(CTPとCOCを含む)の遺伝子を対象にゲノム編集を利用した網羅的な機能解析を実施しており、その一部についてクエン酸生産への寄与の有無を明らかにしている。さらに細胞質から細胞外(培養液)へクエン酸を排出するタンパクCEXAについて機能解析を進めている。CEXAをコードする遺伝子のノックアウトによってクエン酸生産能が欠失することに加え、その遺伝子の高発現によりクエン酸生産量が増大することを見出した。以上のように、「ミトコンドリアから細胞質」および「細胞質から細胞外」へのクエン酸輸送機構を統一的に解釈することを可能にしたことは有意義な成果と考えている。今後は、2つの輸送機構の改変と協調を通じて、クエン酸高生産菌の育種を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、遺伝子の網羅的な機能解析に適したゲノム編集技術を確立した。さらにゲノム編集技術を用いてクエン酸生産の場であるミトコンドリアに局在する有機酸輸送体遺伝子の機能解析に着手することができた。特筆すべきは、クエン酸高生産菌における主要なクエン酸輸送体がCOCとCTPの二種であることを特定し、ゲノム編集を利用した二重遺伝子ノックアウト株の作製と機能評価に成功したことにある。本研究に適したゲノム編集技術とその活用による高効率な遺伝子ノックアウトによって実現できた成果といえる。さらに、細胞質から細胞外へのクエン酸輸送体を特定し、「クエン酸高生産菌におけるミトコンドリアから細胞質を経て細胞外へのクエン酸輸送(排出)機構」の本質を明らかにすることができた。 2020年度の成果は、学会発表および学術誌(専門誌)への発表(掲載)を通じて広く国内外へ公開している。さらに、現在未発表の成果についても学術誌への投稿準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度から継続して行っているミトコンドリア局在型輸送系遺伝子の網羅的な機能解析を実施する。前年度の研究では2種のクエン酸輸送体(COC, CTP)がクエン酸高生産に寄与する主要な輸送体遺伝子であることを明らかにしたため、これらクエン酸輸送系の最適化を実施する。COCやCTPの遺伝子を改変した株における有機酸の経時的変化とクエン酸生産条件下で転写される8種の輸送体遺伝子の機能解析の知見と総合的に考察することで最適なミトコンドリア有機酸輸送系を検討する。また、サイトゾルから細胞外へのクエン酸特異的な輸送体CEXAの遺伝子を高発現することで、クエン酸高生産菌においてもさらなるクエン酸生産の促進(生産量の増大)が起こることを見出した。すなわち、CEXA遺伝子高発現によりクエン酸の生産が刺激された際の有機酸の挙動を同時に解析することで最適なミトコンドリア有機酸輸送系についてより詳細に考察できることが期待できる。一方、研究室保有の別種のクエン酸生産菌のゲノム解読研究も開始しており、当該菌株をWU-2223L株の比較対象とすることで新規な知見が得られることを確信している。 以上より、ミトコンドリアから細胞質および細胞質から細胞外へのクエン酸輸送機構を統一的に解釈し、クエン酸生産機構を体系的に理解し、高生産菌育種を実現する。
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[Journal Article] 3)Draft genome sequence of Aspergillus tubingensis WU-2223L, a citric acid-producing filamentous fungus belonging to Aspergillus section Nigri2020
Author(s)
Yoshioka, I., Takahashi, H., Kusuya, Y., Yaguchi, T., and Kirimura, K.
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Journal Title
Microbiology Resource Announcements
Volume: 9
Pages: e00702-20
DOI
Peer Reviewed
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