2021 Fiscal Year Annual Research Report
Breeding of filamentous fungi producing citric acid with high efficiencies by the genome editing system
Project/Area Number |
20H02906
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
桐村 光太郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90195412)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Aspergillus tubingensis / Aspergillus niger / citric acid / organic acid transport / CRISPR/Cas9 / genome editing / mitochondria |
Outline of Annual Research Achievements |
クエン酸高生産糸状菌Aspergillus tubingensis WU-2223Lを供試菌として効率的なゲノム編集技術を確立し(I. Yoshioka, and K. Kirimura, J. Biosci. Bioeng., 131 (6), 579-588 (2021))、有機酸輸送体遺伝子の機能解析に応用した。ゲノム編集技術を用いて、ミトコンドリアに局在する有機酸輸送体タンパクをコードする遺伝子の機能解析を実施し、クエン酸生産に関与する輸送体遺伝子を特定することに成功した(論文投稿中のため詳細省略)。また、細胞質から細胞外(培養液)へクエン酸を排出するタンパクCEXAについて機能解析を進めた。供試菌はグルコースを炭素源とした場合に2%(v/v)メタノールの培地への添加によってクエン酸生産量が増大する、いわゆるメタノール効果を顕著に示す菌株である。メタノール効果は1940年代に見出されていたが、その本質は不明なままであった。申請者はメタノール効果の1つの標的がCEXAをコードする遺伝子cexAで、この遺伝子を高発現させればメタノール非存在下でもクエン酸生産量が高いクエン酸生産糸状菌が作製できるとの作業仮説を立て、これについて検証した。まず、CEXAをコードする遺伝子cexAのノックアウトによってクエン酸生産能を欠失した株を作製した。つぎに、これを宿主として、ゲノム編集技術によりtef 高発現プロモーターの下流にcexAを配置してcexA高発現株を作製し、クエン酸生産能力を検討した。当該高発現株は、メタノール非存在下でグルコースを炭素源として(親株である)WU-2223L株より高いクエン酸生産量を示した(論文投稿中、数値省略)。すなわち、予想通り「メタノール効果非依存型」のクエン酸生産糸状菌の作製に成功し、約80年前からの謎であったメタノール効果の本質を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、ゲノム編集技術を確立し、当該技術を用いてクエン酸生産の場であるミトコンドリアに局在する有機酸輸送体遺伝子の機能解析を効率的に進めている。また、細胞質から細胞外(培養液)へクエン酸を排出するタンパクCEXAについて機能解析を進め、本質が不明であったメタノール効果の解明に向けて研究を進めることができた。新規購入した高速液体クロマトグラフ(島津LC2060C 3D)を駆使することで効率的な検討が可能になった。cexA高発現株の作製によって、メタノール非存在下でグルコースを炭素源として(親株である)WU-2223L株より高いクエン酸生産量を示す株を育種することに成功した。すなわち、約80年前からの謎であったメタノール効果の本質を明らかにし、クエン酸生産糸状菌の育種に新たな方法論を提示することができた。 2021年度の成果については、学会発表を行い、学術誌に投稿中である。これらの発表(および近日中の掲載)を通じて成果は広く国内外へ公開できる。さらに、現在未発表の成果についても学術誌への投稿準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度から継続して行っているミトコンドリア局在型輸送系遺伝子の網羅的な機能解析について、成果をとりまとめ学術誌に投稿する。COCを含む7種の輸送体遺伝子の機能解析から得られた知見を総合的に考察することで、最適なミトコンドリア有機酸輸送系を明らかにする。また、サイトゾルから細胞外へのクエン酸特異的な輸送体CEXAの遺伝子を高発現させることによりメタノール効果非依存型クエン酸生産糸状菌の育種に成功したので(2021年度の成果)、スクロースをはじめグルコース以外の糖類からのクエン酸生産能力を検討し、高効率クエン酸生産糸状菌としての能力を明確にする。併せて、COC遺伝子とCEXA遺伝子の同時高発現によりクエン酸輸送系を強化し、クエン酸超高生産菌株の育種を試みる。一方、研究室保有の別種のクエン酸生産菌(WU-2020株)のゲノム解読を終了したので(論文投稿準備中)、当該菌株とWU-2223L株のゲノムの比較研究を実施することでクエン酸生産に関する新規かつ有用な知見が得られることを確信している。以上より、ミトコンドリアからサイトゾルおよびサイトゾルから細胞外へのクエン酸輸送機構を統一的に解釈し、クエン酸生産機構を体系的に理解し、クエン酸高生産菌の育種を実現する。
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