2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of mechanisms for transport and storage of hydrophobic metabolites in plant cells toward establishment of a polymer factory cell system
Project/Area Number |
20H02909
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 征司 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90343061)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂肪顆粒 / ゴム粒子 / ポリイソプレノイド / プレニルトランスフェラーゼ / 天然ゴム |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪顆粒(LD)やゴム粒子(RP)などの脂質単層膜オルガネラに外来酵素を導入することで、疎水性生成物を膜内部へ蓄積させる代謝工学系の構築が可能となると考えられる。しかし、LDやRPへのタンパク質移行機構はほとんど未解明解明であった。本研究では、「(1)脂質単層膜オルガネラへの移行に必要なタンパク質モチーフと制御機構の解明」と、その機構を応用した「(2)脂質単層膜オルガネラへの外来酵素導入による有用疎水性化合物生産系の構築」を行うことを目標としている。 2021年度は、上記(1)に関し、「課題3:LD、RP膜への移行に必須なドメインの解明」を実施した。RP膜の主要タンパク質であるSRPPおよびREFと、植物のLD膜の主要タンパク質であるLDAPやMLDPの一次構造には類似性があることから、これらのタンパク質間で共通した脂質単層膜結合ドメインが存在することが予想された。そこで、クラミドモナスより調製したLD を用いたin vitroタンパク質導入アッセイを行ったところ、LDAPやMLDPだけでなく SRPPやREFもLD膜に結合することが明らかとなった。また、MLDPについては、LD膜への結合に特に寄与する両親媒性ヘリックスドメインを特定することに成功した。さらに、ベンサミアナタバコにおけるin vivo解析において、上記の膜タンパク質群はLDが形成されていない細胞内ではER等に局在するのに対し、LD形成を誘導させた細胞内では専らLDに局在することが示された。これらの結果から、上記の膜タンパク質群は脂質単層膜との親和性が高い両親媒性ヘリックスドメインを有することが明らかとなった。 また、上記(2)に関し、「課題5:膜移行配列と融合させた新規ポリイソプレノイド合成酵素のLD、RPへの導入」を実施し、課題3で特定した領域と融合させた外来酵素が効率よくLDに導入可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題3:LD、RP膜への移行に必須なドメインの解明 2020年度に開発した,クラミドモナス由来LDを添加した無細胞翻訳系を用いることで、安定なin vitroのLD導入アッセイを行うことができたため、計画通りに研究を進めることができた。本実験系を用いることで、当初予定していたSRPP、REF、LDAP、MLDPだけでなく、ポリイソプレノイド合成酵素にも新規なLD膜結合ドメインが含まれることが明らかとなった(後述)。 課題5:膜移行配列と融合させた新規ポリイソプレノイド合成酵素のLD、RPへの導入 超長鎖のtrans-1、4-ポリイソプレンを合成することが報告されているサポジラのトランスクリプトームデータを取得し、trans型プレニル鎖延長酵素(tPT)のホモログから解析候補を絞り込み、異種発現させ酵素アッセイを行った結果、膜担体などを必要とせずに精製酵素単体で分子量一万以上のポリイソプレノイドを合成可能なMztPT2を同定することに成功した。この酵素のN末端側には、一般的なtPTには存在しない,複数の両親媒性ヘリックスを含む領域を有しているが、その領域がLD膜への結合性を示すことも明らかとなった。 一方で、課題3で特定したLD膜結合配列をcis型プレニル鎖延長酵素(cPT)に融合させ,LDへの導入を試みた結果,LDに導入されたcPTの酵素活性が極めて低くなることが判明した。それに対し,それらの酵素をRPに導入した際は明確な活性が示されることから、クラミドモナスLD膜上に何らかのcPT活性阻害因子が存在することが示唆された。この点を解決する必要が生じたため、「課題4: LD、RP膜移行タンパク質と相互作用するタンパク質の探索」は次年度に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
課題5:膜移行配列と融合させた新規ポリイソプレノイド合成酵素のLD、RPへの導入 クラミドモナスLD膜上に存在することが予想されるcPT活性阻害因子がタンパク質か、膜脂質であるかを検証するため、人工LDを調製し、そこにcPTを導入する。人工LDはトリグリセリドあるいはポリイソプレンを核として、クラミドモナス,あるいはダイズより調製した膜脂質混合物を用いて調製する。膜脂質の組成によらず人工LDに導入されたcPTが明確に活性を示す場合は、阻害因子がタンパク質である可能性が高いため、クラミドモナス由来LDを用いてcPTの機能解析を進めることが困難になる。その場合は、人工LDを用いて機能解析を行う方針に変更する。一方、MztPT2によるtrans型ポリイソプレン合成の機能解析は、当初の計画通りにクラミドモナスLDおよびRPに導入する。その際、MztPT2に存在する膜結合領域を欠失させ、代わりに課題3で見出したLD結合ドメインを融合させたキメラタンパク質についても機能解析を行い、LDへの導入効率や酵素の反応生成物の分子量分布を比較解析する。 課題4: LD、RP膜移行タンパク質と相互作用するタンパク質の探索 LD、RPへのClass IIタンパク質の移行に寄与するタンパク質を探索するため、膜タンパク質間相互作用をアッセイ可能である酵母split ubiquitin systemを用いて、課題3で解明されたタンパク質(ドメイン)に相互作用するタンパク質をライブラリーよりスクリーニングする。また、LD形成を誘導させたベンサミアナタバコの葉に対し、黄色蛍光タンパク質による二分子蛍光相補アッセイを行うことで、細胞内の相互作用部位を解析し、相互作用タンパク質の膜移行における機能を解析する。
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