2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20H02912
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小段 篤史 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (80360543)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体分子 / 膜タンパク質 / トランスポーター / 細胞膜 / 脂質 / コレステロール / 立体構造 / 分子メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒト由来の脂質輸送型ABCタンパク質を対象とし、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析、生化学的解析、及び細胞生物学的解析などの多面的な解析により、脂質輸送型ABCタンパク質の作用機構と生理的役割を解明すること目的とする。ABCタンパク質は12-17 回膜貫通αへリックスをもつ蛋白質であり、特にABCA1は2261アミノ酸残基の大きな膜タンパク質である。そのため、機能を保持したまま大量に精製することは容易ではない。2020年度は、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析のために必要となる、ミリグラムレベルの単分散性の高い脂質輸送型ABCタンパク質試料の生産基盤を確立することを目指した。ヒトABCA1をヒト由来のFreeStyle 293細胞を用いた一過性発現系により発現させ、活性を保ち単分散性の高い状態で精製サンプルを取得できる界面活性剤(GDN)を決定した。可溶化後、FLAGアフィニティー精製とゲル濾過を行い、1L培養あたり約0.3 mgのABCA1を活性を保った状態で取得できた。この発現系を数十L規模にスケールアップし、ミリグラムレベルのABCA1タンパク質の生産・調製基盤を構築することに成功した。さらに、ABCA1に結合していた脂質が界面活性剤によって除去されてしまうことを想定し、精製ABCA1の脂質ナノディスクへの再構成を検討した。膜骨格蛋白質(MSPs)および脂質の種類と混合比率、さらには界面活性剤の除去方法など、再構成条件を最適化することで、ABCA1を効率よく脂質ナノディスクへ再構成することができた。さらに、脂質ナノディスクに再構成されたABCA1を用いて、負染色による解析を実施したところ、単分散で均一なタンパク質粒子像が認められ、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析が可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトABCA1タンパク質の大量生産・調製基盤、および、ヒトABCA1のナノディスク再構成系を構築することに成功し、ヒトABCA1のクライオ電子顕微鏡による単粒子解析のための土台を築くことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
クライオ電子顕微鏡による単粒子解析およびトモグラフィー解析により、ナノディスクに再構成され、脂質を結合した、機能状態に近いABCA1の立体構造を決定する。
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Research Products
(7 results)