2021 Fiscal Year Annual Research Report
CRISPR-Cas系とトランスポゾンの相互作用によるDNA転移の分子基盤解明
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20H02916
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沼田 倫征 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10401564)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CRISPR-Cas / crRNA / Casタンパク質 / エフェクター / トランスポゾン / DNA転移 / ゲノム / クライオEM |
Outline of Annual Research Achievements |
CRISPR-Cas系は原核生物がもつ獲得免疫系であり、ウイルスやプラスミドなど可動遺伝因子を分解してそれらによる攻撃から自己を守るという重要な役割を果たしている。CRISPR-Cas系の役割としては、外来侵入核酸から自己を守る生体防御としての側面が主であるが、それ以外にも多様な機能が報告されている。一部の細菌では、トランスポゾン内にCas遺伝子とCRISPRアレイがコードされており、トランスポゼースと協同してDNAの転移に関与する。前年度までに、Cas6, Cas7, Cas8, TniQおよびcrRNAから成る複合体(TniQ-Cascade)を調製し、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析によって分解能3.6Åの三次元マップが得られた。しかし、Cas8, Cas6, TniQのマップを確認することができず、完全な複合体構造の決定には至っていなかった。今年度は、完全な複合体構造の決定を目指して実験を行った。Cas8, Cas6, TniQのマップを確認することができなかった理由として、(1)グリッドを作製する際にこれらサブユニットが複合体から解離してしまった可能性、(2)グリッド作製後もこれらサブユニットは複合体に含まれているが、構造が揺らいでおり明瞭な三次元マップが得られなかった可能性、(3)サンプルのヘテロジェニティーにより、これらサブユニットの占有率が100%でなかった可能性などが推定された。そこで、サンプル調製およびグリッド作製を最適化し、Cas8, Cas6, TniQの三次元マップの取得を試みた。その結果、Cas8に相当する三次元マップを得ることに成功した。一方、Cas6とTniQに関しては、明瞭な三次元マップを得ることはできなかったが、おぼろげなマップを確認することができ、複合体中に全てのサブユニットが含まれていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cas6, Cas7, Cas8, TniQおよびcrRNAから成る複合体(TniQ-Cascade)を大腸菌内において産生した。大腸菌の破砕液から各種クロマトグラフィーを利用してTniQ-Cascadeを精製した。最終的には、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて単一の複合体を調製した。サンプルを調製する際、塩濃度、添加剤、緩衝液の種類とpHなども適宜変更し、TniQ-Cascadeの精製条件を最適化した。得られたサンプルについて、Vitrobotを利用してグリッドを作製した。この際に、凍結条件やグリッドの種類を検討した。次に、クライオ電子顕微鏡を利用してデータを収集し、単粒子解析によってTniQ-Cascadeの三次元マップを再構成した。その結果、Cas7に加えてCas8に相当する三次元マップを得ることに成功した。一方、Cas6とTniQに関しては、明瞭な三次元マップを得ることができなかった。しかしながら、Cas6およびTniQと考えられるマップを確認することができ、複合体中に全てのタンパク質サブユニットが含まれていることが明らかとなった。次に、Cas6およびTniQと推定される領域をマスクして再解析した結果、これら2つのサブユニットの三次元マップを低分解能ではあるが得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
サンプル調製方法の検討、グリッド作製条件の検討、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法を検討することにより、これまで確認できなかったCas8サブユニットの三次元マップを得ることができた。一方、Cas6とTniQについては、解析方法を検討することにより、低分解能ではあるもののマップを確認することができた。しかしながら、Cas6とTniQの部分については分解能が悪いのが現状であり、詳細な原子モデルの構築は困難である。今後、Cas6とTniQの領域の分解能を上げるために解析方法をさらに検討する。また、さらなるサンプル調製およびグリッド作製条件の検討も試み、分解能の向上を目指す。現在、Cas8とCas7の領域に関しては良質な三次元マップが得られているため、今後、原子モデルを構築し構造の精密化を行う。Cas6とTniQの領域については、明瞭なマップが得られない場合に備え、それぞれ単独の結晶構造を決定する。それら単独の結晶構造を現在得られている低分解能の電子密度にフィッティングし全体構造の決定も目指す。さらに、in vivoにおけるDNA転移活性の再構成も目指す。
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[Journal Article] A chemical probe based on the PreQ1 metabolite enables transcriptome-wide mapping of binding sites2021
Author(s)
Balaratnam, S., Rhodes, C., Bume, D.D., Connelly, C.M., Lai, C.C., Kelley, J.A., Yazdani, K., Homan, P.J., Incarnato, D., Numata, T. and Schneekloth, J.S. Jr.
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Journal Title
Nat. Commun.
Volume: 12
Pages: 5856
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Family D DNA polymerase interacts with GINS to promote CMG-helicase in the archaeal replisome2021
Author(s)
Oki, K., Nagata, M., Yamagami, T., Numata, T., Ishino, S., Oyama, T. and Ishino, Y.
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Journal Title
Nucleic Acids Res.
Volume: gkab799
Pages: gkab799
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] DNA polymerase D temporarily connects primase to the CMG-like helicase before interacting with proliferating cell nuclear antigen2021
Author(s)
Oki, K., Yamagami, T., Nagata, M., Mayanagi, K., Shirai, T., Adachi, N., Numata, T., Ishino, S. and Ishino, Y.
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Journal Title
Nucleic Acids Res.
Volume: 49
Pages: 4599-4612
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Minimal protein-only RNase P structure reveals insights into tRNA precursor recognition and catalysis2021
Author(s)
Teramoto, T., Koyasu, T., Adachi, N., Kawasaki, M., Moriya, T., Numata, T., Senda, T. and Kakuta, Y.
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 297
Pages: 101028
DOI
Peer Reviewed