2020 Fiscal Year Annual Research Report
菌根共生を制御するKAI2受容体リガンドの同定とその共生制御機構の解明
Project/Area Number |
20H02925
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋山 康紀 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20285307)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | KAI2リガンド / カリキン / ストリゴラクトン / ミヤコグサ |
Outline of Annual Research Achievements |
カリキン(karrikin, KAR)は植物が燃焼した際に出る煙由来の発芽刺激物質であり,植物ホルモンのストリゴラクトン(strigolactone, SL)と同じブテノライド化合物である。KARシグナル経路は受容体タンパク質KAI2とF-boxタンパク質MAX2,その抑制タンパク質SMAX1から構成されている。一方で,SL経路はKAI2のパラログである受容体D14とMAX2,SMAX1と同じファミリーであるSMXL6/7/8から構成されている。KARは種子発芽以外にも光形態形成促進や胚軸伸長抑制を示す。kai2およびmax2変異体は,KARに非感受性であるだけでなく,発芽遅延などの表現型異常を示し,SMAX1の機能欠損変異体はKAR非処理でもKAR応答を誘導する。さらに,KAI2はSLを受容せず,KAR類縁体が植物内生から検出されないという事実から,KAI2はKAR以外にも,KAI2 ligand (KL)と呼ばれる未知の植物内生物質を受容することが示唆されている。近年,KAI2シグナル経路については数多くの研究がなされているが,KL は未同定である。そこで本年度は研究開始にあたり,ミヤコグサからのKL活性物質の検出と部分精製をおこなった。KL活性評価には,KAI2シグナルのマーカー遺伝子であるDLK2発現を指標としたバイオアッセイを用いた。ミヤコグサの野生型とkai2変異体の抽出物のKL活性物質の内生量の比較をすると,kai2変異体由来の抽出物でのみKL活性が確認された。kai2変異体に対してアッセイを行ったところ,kai2変異体抽出物の処理・非処理の両方でDLK2発現は検出限界以下であった。これらの結果からkai2変異体では,KAI2欠損による負のフィードバック異常でKLが過剰生産されていると推定された。現在,kai2変異体を抽出ソースとしてKLの精製を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミヤコグサkai2変異体を抽出材料としてDLK遺伝子発現をマーカーとしてKL活性を検出することに成功した。現在行っている精製過程の詳細については伏せておく必要があるので詳細についてここに書くことはできないが、今のところ、最も精製が進んだ段階において数十マイクログラム/mlで活性を示す精製画分が得られている。単離したKLはサブマイクロモラーで活性を示すと想定していることから、もう一段階精製度を上げることができれば単離に至ると予想している。
|
Strategy for Future Research Activity |
単離できるKLの量は極微量であることが容易に予想できるので、ミヤコグサkai2変異体を大量に準備して十分な抽出原料を確保することに努める。さらに、精製の過程でKL活性物質が非常に不安定であることが分かっているので、分解を抑え、かつ回収率の良い精製の方法を種々検討することにより、次年度には単離に漕ぎ着けたいと考えている。
|