2020 Fiscal Year Annual Research Report
吸収と代謝に着目したスフィンゴ脂質の皮膚バリア機能向上作用メカニズムの解明
Project/Area Number |
20H02931
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅原 達也 京都大学, 農学研究科, 教授 (70378818)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 晃規 京都大学, 農学研究科, 助教 (10537765)
真鍋 祐樹 京都大学, 農学研究科, 助教 (20730104)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | スフィンゴ脂質 / 消化吸収 / 皮膚 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な生物由来のスフィンゴ脂質が「食品セラミド素材」として用いられており、とくに皮膚への効果が期待されている。しかしながら、その詳細なメカニズムは不明である。本研究では、大きな矛盾と疑問を抱えている「スフィンゴ脂質の経口摂取による皮膚バリア機能向上作用」のメカニズムの解明を目指す。とくに、経口摂取されたスフィンゴ脂質の体内動態と代謝変換に注目して、経口的に摂取されたスフィンゴ脂質分子が、生体内でどのように代謝変換されるのか詳細に調べ、生じる代謝物の体内動態と生物活性を解明することを目標とするものである。 スフィンゴ脂質の吸収について、新たな知見を得るために、極性基の結合していない遊離セラミドと植物由来グルコシルセラミドの吸収について、マウス血中動態を調べることで評価したところ、一部はセラミド構造が維持されたまま吸収されうることが示された。また、安定同位体ラベル化スフィンゴ脂質を用いた検討でもセラミドがCaco-2細胞に取り込まれることを確認した。 ヘアレスマウスを用いて皮膚に対する食事性スフィンゴ脂質の効果について検証した結果、海産軟体動物に特徴的なスフィンゴ脂質であるセラミド2-アミノエチルホスホン(CAEP)や極性基を持たない遊離セラミド(醤油粕由来)についても、これまで「食品セラミド素材」として用いられてきているコメやトウモロコシ由来のグルコシルセラミドと同等以上に効果を示すことを明らかにした。このとき、作用メカニズムの一端として、表皮に特有のたんぱく質結合型セラミドの生合成経路が活性化していることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スフィンゴ脂質の吸収機構に関する新しい知見として、セラミドが直接吸収される可能性を培養細胞と動物実験で示すことができた。また、スフィンゴ脂質摂取による皮膚バリア機能向上作用のメカニズムとして、表皮におけるたんぱく質結合型セラミドの生合成経路が賦活されることが示され、その効果はスフィンゴイド塩基構造に依存しない可能性を見出すことができ、新たな知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
磁気ビーズを用いたプルダウンアッセイを活用し、スフィンゴイド塩基に結合できるたんぱく質の探索と同定を進めることで、スフィンゴ脂質の選択的吸収メカニズムの解析へとつなげることを目指す。また、吸収されたスフィンゴ脂質の動態の解明について、菌体から調製した安定同位体ラベル化スフィンゴ脂質を活用し、動物実験や培養細胞を用いた検討を進める。
|