2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms and physiological significance of short chain fatty acid- and polyunsaturated fatty acid-mediated regulation of mast cell function
Project/Area Number |
20H02939
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
西山 千春 東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 教授 (20327836)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 短鎖脂肪酸(SCFA) / 多価不飽和脂肪酸(PUFA) / Gタンパク質共役型受容体(GPCR) / プロスタグランジン / マスト細胞 / 樹状細胞 / アナフィラキシー / 炎症反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
短鎖脂肪酸(SCFA)は、酢酸や酪酸などに代表される鎖長の短い脂肪酸を指し、宿主にとって難消化性の食物繊維が腸内細菌によって分解される際に産生される。近年、SCFAが腸管だけでなく全身の様々な臓器において免疫応答を制御し、生体に有益な作用をもたらすことが明らかになっている。アレルギー反応のエフェクター細胞であるマスト細胞についてもSCFAによる機能制御が報告されつつあるが、その分子機構は多くが不明なままである。本課題では、IgE依存的なマスト細胞活性化において、SCFAがマスト細胞上のGタンパク質共役型受容体(GPCR)を介した活性化制御や、SCFAのヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害活性による遺伝子エピジェネティック制御、抗酸化作用に関わる分子群を活性化することなどによってもたらす影響を、siRNAや阻害剤、遺伝子改変マウスなどを組み合わせて解析している。 多価不飽和脂肪酸(PUFA)が腸内乳酸菌代謝を経て産生される化合物類も多様な生理活性を発揮することが報告されている。本課題では、PUFA代謝産物の一つであるγKetoCが、マクロファージや樹状細胞などの単球系細胞の活性化を抑制することによって炎症反応や過剰な免疫反応を抑制し得ることを発見している。また、同じくPUFA代謝産物の一種であるKetoAについて、疲弊T細胞の活性を回復する可能性を見出している。これらPUFA代謝産物の作用について、in vitroによる作用機序の解析とin vivo実験系での生理的意義の評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マスト細胞に対するSCFAの作用について、分子機構の解析をin vivo、in vitroで進めることができた。PUFA代謝産物のうち、KetoAについては分子や細胞レベルで、γKetoCについては生体レベルで効果が確認され、ノックアウトマウスなどを用いた作用点解析も進んでいる。当初の予定以上の進展として、乾癬に対する酪酸経口投与の効果を確認し、その分子機構解析が行えている。一方、GPR109A-floxマウスが未だ得られていない。各項目の詳細は以下の通り。 SCFAがマスト細胞にもたらす活性化抑制作用に抗酸化ストレス関連転写因子であるNRF2経路活性化が寄与する可能性を検証するため、Nrf2ノックアウトマウスのアナフィラキシー反応や同マウス由来マスト細胞の活性化反応を解析した。 マウスへの酪酸経口投与により、全身性や局所性のアナフィラキシーが顕著に抑制され、さらに非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を投与することによって酪酸の効果が阻害されることを見出している。酪酸と共にPGE2受容体の特異的アンタゴニストを投与し、一部のPGE2受容体アンタゴニストによってSCFAによるアナフィラキシー緩和が阻害されることを確認した。 Nrf2ノックアウトマウスの解析から、γKetoCによるNRF2活性化が、樹状細胞における炎症性サイトカイン分泌の抑制に関わることが示唆された。 酪酸の経口投与が皮膚疾患乾癬を緩和することを、イミキモド誘導性乾癬モデルマウスを用いて示した。培養樹状細胞を用いた実験から、TLR-7/8依存的な樹状細胞活性化に伴い分泌される炎症性サイトカイン量が、酪酸処理によって低減することが確認された。このような樹状細胞への酪酸の効果に、NRF2経路、HDAC阻害活性、GPR109A経路がそれぞれ関わる可能性を、ノックアウトマウス、阻害剤、siRNAを用いて検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
酪酸経口投与によるIgE依存的アナフィラキシーの緩和がNSAIDsやPGE2受容体アンタゴニストによって阻害されたことから、SCFAはマスト細胞からのPGE2産生を促進することによってアレルギー反応抑制効果をもたらしている可能性を考えている。ただし、これまでの我々の実験系においてアンタゴニストで影響が見られたPGE2受容体は、これまで報告されてきた受容体とは異なることや、SCFAによるPGE2産生促進の機構に不明な点が残っていることなど、引き続き解析が必要である。GPR109Aリガンドであるナイアシンの効果を検証することや、SCFAにより発現誘導される抗炎症性サイトカインIL-10のノックアウトマウスを用いたin vivo、in vitro実験を取り入れることによって、更なる解明を目指す。 KetoAによるT細胞制御の分子機構を明らかにするため、KetoA標的分子の候補と考えられる転写関連因子の発現レベルや機能変化を解析すると共に、KetoAの生体への効果をマウス担がんモデルや転移モデルを用いて検証する。 γKetoCの経口投与により、炎症性腸疾患や多発性硬化症の病態が緩和することを、マウスを用いた予備実験において観察しており、今後はその有意性や再現性を確認する。また、これらの病態緩和にNRF2が寄与する可能性について、ノックアウトマウスへのγKetoC投与効果を評価することによって明らかにする。γKetoCは、GPR40やGPR120を介して樹状細胞やマクロファージに作用する可能性も示されており、siRNAなどを用いてこれら受容体の役割を明らかにする。 Hcar2 (GPR109A遺伝子)-floxマウスの作出を計画(東京理科大学生命医科学研究所に依頼済み)しており、マウスが得られ次第、マスト細胞や樹状細胞特異的なGPR109Aノックアウトマウスの解析を行いたい。
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Remarks |
科学新聞(2021年11月5日)掲載:理科大など解明:末梢の免疫細胞をオピオイドが調節;炎症性腸疾患緩和か 東京理科大学HP学生受賞:https://www.tus.ac.jp/today/archive/20220317_6028.html(本学大学院生が「きぼう」プロジェクト免疫学博士課程学生支援に採択)
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[Journal Article] Interleukin-11-expressing fibroblasts have a unique gene signature correlated with poor prognosis of colorectal cancer2021
Author(s)
Nishina T, Deguchi Y, Ohshima D, Takeda W, Ohtsuka M, Shichino S, Ueha S, Yamazaki S, Kawauchi M, Nakamura E, Nishiyama C, Kojima Y, Adachi-Akahane S, Hasegawa M, Nakayama M, Oshima M, Yagita H, Shibuya K, Mikami T, Inohara N, Matsushima K, Tada N, Nakano H
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 12
Pages: 2281
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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