2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規シグナル伝達系・NELL-Roboシグナルの骨形成における作用機序の解明
Project/Area Number |
20H02948
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新美 友章 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (30377791)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 公彦 京都大学, 農学研究科, 助教 (40314281)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 骨芽細胞 / シグナル伝達 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳児期に頭頂骨の骨と骨のつなぎ目が早期に癒合することで知られる頭蓋骨縫合早期癒合症(狭頭症)の原因遺伝子のひとつであるNELL1は、頭蓋顔面の骨格形成に関わる分泌タンパク質をコードしており、その骨形成作用に基づいた骨再生治療への応用が試みられている。しかし、NELL1による骨形成作用の分子基盤、特に細胞表面受容体と下流のシグナル伝達機構は不明な点が多く、臨床応用する際のボトルネックとなっている。本研究では、我々が新たに発見したNELL1 の新奇受容体Roundabout (Robo) 2 と下流のシグナル伝達経路(NELL1-Robo2シグナル)の骨形成における役割を解明することにより、組換えNELL1 タンパク質を利用した骨再生治療の基盤研究を行うことを目的とした。 昨年度は、Fluorescence resonance energy transfer (FRET) の変化を指標にしたRobo2 の構造解析実験を行い、酸性条件でのFRET測定に適した蛍光タンパク質の選定、およびセンサータンパク質の最適化を経て、酸性条件におけるRobo2の細胞外領域の推定構造を得た。今後、複数の実験系を用いて、この推定構造を確かめる必要があるが、Robo2の新奇受容体としてNELL1が働く分子基盤の一端が解明されたことで本研究成果は重要である。 京都大学との共同研究であるRobo2細胞外領域の結晶構造解析実験では、タンパク質の大量発現系の構築と精製および結晶化の条件検討を行い、次年度以降に成果が得られることを期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NELL1の新奇受容体として同定したRobo2は、pH 7付近の生理的条件下においてはNELL1の結合部位がマスクされていて結合できないが、pH 5~6付近の酸性条件下では、Robo2の細胞外領域のコンフォメーション変化により、NELL1が結合できるようになる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)解析により、酸性条件下におけるRobo2の推定構造を取得し、NELL1-Robo2シグナルが働く分子基盤の一端を解明した。研究の進捗状況はおおむね順調であるが、現在、上記の推定構造が正しいことを証明するべく実験を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
NELL1-Robo2シグナルの役割の解明を目指して、NELL1がRobo2に結合する仕組みを明らかにする。NELL1はRobo2と酸性条件下で結合することがわかっており、それはpH変化に伴うRobo2の構造変化に起因する。今後は、FRET解析により得たRobo2細胞外領域の推定構造が正しいかどうかを他の複数の実験系を用いて解析を進める予定である。また、分担研究者である京都大学大学院農学研究科の水谷公彦先生との共同研究により、Robo2の細胞外領域の結晶構造解析を開始したが、構造解析に最適な条件を検討中であり、本年度中の解析を目指す。 昨年、米国の研究グループにより、NELL2とRobo3の結合部位の結晶構造が報告された。Robo3はRobo2のようなヘアピン構造を取りにくいため、NELL1-Robo2の結合とは状況が異なるが、NELL1/2がRobo2/3に結合する部分のアミノ酸はかなり保存されており、NELL1がRobo2に結合する仕組みを解明するのに大変参考になる論文であった。そこで本年度は、NELL1-Robo2の結合の仕組みをアミノ酸レベルでも解析を進める。 昨年度は、前駆骨芽細胞の酸性条件培養法の確立を試みたが、培地の作製方法の検討で終えたので、本年度は本格的に培養を開始し、酸性条件におけるNELL1-Robo2シグナルの解明に着手する。
|