2021 Fiscal Year Annual Research Report
Function of the new open reading frame appeared by cytoplasmic splicing in plants
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20H02950
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小泉 望 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20252835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス応答 / シロイヌナズナ / 細胞質スプライシング / 転写因子 / 細胞内局在 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物に存在する小胞体膜上では細胞の約3分の1のタンパク質が合成される。合成されたタンパク質は小胞体内で正しくフォールディングされた後、その機能を果たす。フォールディングは複数のシャペロンにより効率的に起こる。フォールディングに支障が起こるとシャペロン等の遺伝子発現が活性化される。この現象は小胞体ストレス応答と呼ばれ、酵母、動物、植物まで広く保存されている。一方、小胞体ストレス応答の活性化のメカニズムは生物により大きく異なる点がある。特に、全ての真核生物に見られる小胞体ストレスセンサーIRE1はN末側に小胞体内腔に位置するセンサードメインをC末側に細胞質に位置するタンパク質及びRNaseドメインを持ち、転写因子のmRNAの細胞質スプライシングに働く。細胞質スプライシングの結果、転写因子は活性化されるが、その活性化様式が酵母、動物、植物で大きく異なる。研究代表者らはモデル植物シロイヌナズナを使い、IRE1が小胞体膜に結合している転写因子bZIP60のmRNAの細胞質スプライシングに関わること、その結果bZIP60が膜貫通ドメインを失って核へ移行することを明らかにした。一方、細胞質スプライシングの結果生じるbZIP60には新たな読み枠に由来する39アミノ酸からなる領域(ORF2)が付加される。しかし、このORF2の機能は不明であった。そこで本研究ではこのORF2の機能を明らかにすることを目的に研究を実施した。まずORF2を持つbZIP60タンパク質をbZIP60sとし、ORF2を持たないbZIP60をbZIP60ΔCとした。bZIP60ΔCは研究代表者らの先行研究で標的遺伝子であるBiP3プロモーターを活性化することが分かっていたが、bZIP60sはより強く活性化する。従って、ORF2には転写活性化に関わる何らかの役割を果たすと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ORF2が標的遺伝子の活性化に果たす役割の解析 bZIP60遺伝子破壊株を用いたトランジエントアッセイによりORF2の標的遺伝子の活性化への寄与を検討した。35Spro:bZIP60(複数のバリアントを用意)、BiP3pro:LUC、35Spro:RLUCの3つのプラスミドを用いデュアルルシフェラーゼアッセイを行った。概ねbZIP60s (258:全アミノ酸を示す)はbZIP60ΔC(216)の数倍から数10倍の活性を示した。さらにORF2内の重要なアミノ酸を特定するために決失、変異を入れたbZIP60sを作成し。その結果、228番目から243番目のアミノ酸配列が重要な役割を持つ可能性が考えられた。また242番目のロイシンが重要であることも示唆された。 2)ORF2のタンパク質蓄積量の解析 ORF2の長さによりタンパク質の蓄積量が異なる可能性を検討した。プロトプラストで発現させているbZIP60バリアントにはN末にFLAGタグが付加してあり、RLUC活性でプラスミドの導入率を補正しタンパク質をウエスタンブロッティングで検出したところコンストラクトによらずほぼ同量のシグナルが検出されタンパク質の安定性はORF2の長さにより大きく影響は受けないと考えられた。 3)ORF2の細胞内局在への影響 bZIP60の複数のバリアントとGFPとの融合タンパク質をBY2細胞に導入して蛍光を観察することで細胞内の局在性を調べた。その結果、全長のbZIP60s(258)とGFPを融合した場合には明瞭な核局在を観察された。それ以外のコンストラクトではGFP単独の場合と顕著な違いは見られなかった。bZIP60s(243)は明瞭な核局在を示さない一方、bZIP60s(258)と同等の転写活性化能を示した。この現象の説明が今後の検討課題の一つとして残った。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ORF2の機能解析の続行 進捗状況で述べたORF2で重要な役割を果たすアミノ酸についてより明確な結果を得るために、再現性よくトランジエントアッセイを行う。またウエスタンブロッティングによるタンパク質の蓄積量の検出、GFP融合タンパク質を用いた細胞内局在性についてもさらに詳細に調べる。これらの実験を通してORF2が転写活性化に関与するメカニズムをアミノ酸配列の点から明らかとする。 2)ORF2と相互作用するタンパク質の同定 ORF2の付加によりbZIP60の転写活性化能が上昇する理由として、何らかのタンパク質とORF2が相互作用する可能性が強い。そこでそのタンパク質の同定を目指す。アプローチは2つのタグを付加したbZIP60を植物で発現させ、2段階でタンパク質を精製する(Tandem Affinity Purification)。その際、形質転換する植物はbZIP60破壊株とし、導入する遺伝子は細胞質スプライシングの結果、ORF2を有するbZIP60sが生じるコンストラクトとORF2を持たないbZIP60つまりbZIP60ΔCを生じるコンストラクトを用いる。両者で得られたタンパク質で差があるものを質量分析により同定する。同定できたタンパク質が実際にORF2と相互作用するかどうかを酵母ツーハイブリッドおよびBiFC法により確認する。相互作用が確認できればそのタンパク質をコードする遺伝子発現がツニカマイシンなどによる小胞体ストレス応答を誘導する処理に応答するかどうかを定量的RT-PCRにより調べる。
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