2020 Fiscal Year Annual Research Report
イネ科作物の葉の機能性に関与する遺伝学的機構の解明
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20H02955
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 純一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30345186)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イネ / 発生 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに取得した遺伝子発現プロファイルデータのデータ解析と、様々なカテゴリーに基づいた遺伝子抽出を行った。発現プロファイルのデータ解析においては、葉の発生段階、場所の異なる12のサンプルを用いた主成分分析を行い、遺伝子発現からそれぞれのサンプルの発生的な位置付けを考察した。その結果、P1・P2の葉原基を含む茎頂部、P3の葉原基全体、P4の葉 鞘、P4の葉身基部の4部位、P4の葉身頂部とP5とP6を含む組織の7つ部位が、それぞれ似たトランスクリプトームを示した。P4に由来するサンプルはサンプル間でトランスクリプトームが大きく変動していたことから、イネでは葉のP4ステージにおいて、成熟や組織分化に関連したトランスクリプトームのシフトが葉の頂部基部方向に進んでいることが示唆された。クラスタリング解析により、共通して特徴的な発現変化を示す遺伝子群のリストを入手した。それらの中から複数の遺伝子を選出し、茎頂付近においてin situ hybridizationを行った。これらの中から、イネの乳頭状突起形成に関与するOsROPGEF10のホモログであるOsROPGEF2遺伝子が、葉の毛の分化領域に発現することが明らかとなった。そこで、この遺伝子の機能破壊系統をCRISPR/Cas9によって作出することを試みた。OsROPGEF2をターゲットとするgRNAを組み込んだCRISPR/Cas9コンストラクトを作成し、野生型カルスに形質転換したところ、OsROPGEF2の遺伝子コード領域内に変異を持つ形質転換個体を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、イネ葉のトランスクリプトームのデータ解析を進め、論文として公表した。さらにその中から、これまで知られていない葉のトライコームの分化過程に関連すると予想される候補遺伝子の抽出に成功したことから、解析は順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析による逆遺伝学からイネのトライコーム形成に関わる可能性のあるOsROPGEF2遺伝子のCRISPR/Cas9による機能破壊系統を得ることができた。今後は、この遺伝子が本当にトライコーム形成に役割を果たしているかについての詳しい表現型解析が必要となる。
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Research Products
(2 results)