2020 Fiscal Year Annual Research Report
ダイズにおけるフラン脂肪酸生合成経路の解明とその農業特性に与える影響に関する研究
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20H02960
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
穴井 豊昭 九州大学, 農学研究院, 教授 (70261774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 啓史 佐賀大学, 農学部, 講師 (40425541)
鈴木 章弘 佐賀大学, 農学部, 教授 (50305108)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ダイズ / 突然変異体 / フラン脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複数の低フラン脂肪酸ダイズ変異体をトヨシロメと交配してF2集団を作成し、低フラン脂肪酸の表現型を示す複数の個体からゲノミックDNAを抽出し、得られたバルクDNAを次世代シークエンサーにかけ、原因遺伝子の特定を進めるとともに、特定された原因遺伝子を過剰発現させたダイズ毛状根を用いて、これらの遺伝子がフラン脂肪酸生合成経路に、どの様に関わっているのかについても明らかにする。また、これらの変異体を戻し交配して作成した高フラン脂肪酸系統の生育を詳細に解析することにより、フラン脂肪酸の低下が、ダイズの農業形質に与える影響を明らかにするともに、植物体におけるフラン脂肪酸の生理的機能の解明も試みる。さらに、これらの高フラン脂肪酸系統から得られたダイズ油脂について、精油加工した後の「明所臭」発生について評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、3系統の低フラン脂肪酸ダイズ変異体をトヨシロメと交配して作成したF2集団のうち、異なる表現型を示した個体からゲノミックDNAを抽出し、得られたバルクDNAを次世代シークエンサーにかけ、原因遺伝子のマッピングを行なった。その結果、このうち1系統ではGlyma.04G054100遺伝子に変異を生じており、残る2系統ではGlyma.20G201400遺伝子に変異を生じていることが明らかになった。こまた、これらの遺伝子産物のうちGlyma.04G054100遺伝子にコードされているタンパク質はラン藻の一種であるRhodobacter sphaeroidesのフラン脂肪酸代謝に関わるとされているUfaM遺伝子がコードするタンパク質と相同性を示し、Glyma.20G201400遺伝子にコードされているタンパク質はN末端領域がUfaM遺伝子が、C末端領域がUfaM遺伝子がコードするタンパク質と相同性を持つ融合タンパク質をコードすることが明らかになった。そこで、これらの遺伝子の機能をさらに詳細に解析するために、ミヤコグサ由来のユビキチンプロモーターによってダイズ毛状根中で過剰発現させるために使用する発現ベクターを構築した。さらに、これらの低フラン脂肪酸遺伝子がダイズの様々な形質に与える影響を圃場で調査するために、前述のF2系統のうち変異遺伝子をホモに持つ系統を選抜し、種子の増殖を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
Glyma.04G054100がコードするフラン脂肪酸代謝酵素の生化学的特性を調査し、ダイズ中でのフラン脂肪酸合成経路の特性を解明するとともに、ダイズの低フラン脂肪酸遺伝子の農業形質に与える影響を評価し、得られた種子に含まれる油脂についても安定性等の調査を行う。
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