2020 Fiscal Year Annual Research Report
2018年と2019年に岐阜県中濃においてイネ高温不稔被害の程度を決定した要因
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20H02964
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松井 勤 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70238939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 貴 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (20805436)
小林 和広 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (90234814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 岐阜県 / 水稲 / 高温不稔 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.岐阜県中濃地域で発生する高温不稔の要因として,栽培される水稲品種の高温耐性は重要である.そこでまず,岐阜県の水稲奨励品種8品種の開花期の高温による不稔の発生に対する耐性を評価した.5000分の1アールワグネルポットに各品種の生育の揃った苗を円形20本に移植し,出穂期まで栽培し,実験に供試した.3分の一程度の穂が出穂した時に,人工気象器を用いて3段階の高温条件(35℃,37℃,39℃)に遭遇させた.処理期間は3日間とした.処理開始から開花した穂を対象とし,処理終了時に開花を終えていない花は切除し,稔実調査の対象から外した.処理期間中,一部の穂から穎花をサンプリングし,葯の裂開の様子,および受粉の様子を観察した.稔実調査の結果,奨励品種の開花期の高温耐性は強,中,弱に分類された.あきたこまち,あさひのゆめ,ハツシモが耐性強,ひとめぼれ,ここのえもち,たかやまもちは耐性弱と分類された.8品種の稔実率は,柱頭上で発芽した花粉の数でよく説明でき,柱頭上の発芽花粉の数は,柱頭に付着した花粉の数でよく説明できた.さらに柱頭に付着した花粉の数は裂開した葯の数と密接に関係していた.以上のことから,岐阜県の水稲奨励品種の開花期の高温不稔に対する耐性には葯の裂開が強くかかわっていると判断した. 2.2018年から2020年にかけて関市,郡上市,富加町,坂祝町で発生した水稲品種コシヒカリの高温不稔の原因を明らかにする目的で,3市町の水田17筆について,水田内の水深の変異,モンガレ病等の病斑高の変異についてのデータを収集した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岐阜県の水稲高温不稔の発生に密接にかかわる岐阜県水稲奨励品種の高温耐性にかかわる基礎的なデータが得られた.また,2018年,2019年に水稲の不稔を発生した水田に関するデータを収集できた.さらに,2020年には,岐阜県中濃の一部地域で栽培される晩稲において大規模で致命的な不稔が発生したが,研究代表者らはこの災害を高温不稔発生の仕組みの解明の機会ととらえ,地域の不稔発生について調査を行うことができた.以上のことからおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年に当初予想しなかった極端な不稔が中濃地域で発生した.研究代表者らは,この不稔発生を高温不稔発生機構の解明の貴重な機会と捉え,中濃地域での水稲不稔の発生状況を緊急調査した.2021年以降は,この貴重な調査結果を解析の対象に加えて中濃地域における水稲の高温不稔の発生の要因の解明を進める.
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