2021 Fiscal Year Annual Research Report
C4植物で普遍的に起こる葉肉葉緑体凝集運動の誘導機構と生理的役割の解明
Project/Area Number |
20H02966
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
谷口 光隆 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40231419)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 崇生 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60752219)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | C4植物 / 葉緑体 / 光合成 / 環境ストレス / CO2 / 光呼吸 / ミトコンドリア / 葉緑体運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
C4植物が環境ストレスを受けると、葉肉細胞の周縁部に散在している葉緑体は維管束鞘細胞側に移動する“凝集運動”を起こす。この凝集運動の誘導には葉内CO2濃度の低下が関係しているが、その誘導機構の詳細は不明である。 本研究では、凝集運動の誘導機構と生理的役割を解明して、葉緑体凝集運動をC4植物が発揮する高い光合成能およびストレス耐性能の一要因として位置づけられるかを明らかにすることを目的としている。本年度は、以下の結果が得られた。 葉肉葉緑体の凝集運動の誘導因子として、維管束鞘細胞の光呼吸で生じるCO2や代謝中間産物、あるいはミトコンドリア呼吸で生じるCO2が関与している可能性を検討した。その結果、 光呼吸阻害剤を投与したシコクビエの葉では凝集運動が弱まり、ミトコンドリア呼吸阻害剤を投与した葉では変化が無かった。したがって、凝集運動はストレス下で光呼吸が高まることで誘導される可能性が考えられた。 C3植物の葉片の脱気と青色光照射処理によって、向・背軸両側の表皮細胞直下の葉肉細胞の葉緑体が葉組織内部方向へ配置する“偏在運動”を見出した。この葉緑体偏在運動は、葉組織を水没または脱気した状態で青色強光を照射することで誘導され、表皮細胞の存在とは関係がなく、入射光および反射光の影響を受ける応答であることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していたシコクビエ形質転換体が得られていないので、凝集運動の誘導因子の探索に注力した結果、葉緑体誘導機構解明のための足掛かりを得ることができた。引き続きシコクビエやエノコログサの形質転換体を得るように研究を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
凝集運動が光呼吸により誘導される可能性が得られたことから、光呼吸活性と凝集運動の程度の関係を調べる。また、光呼吸経路で生じるCO2、アンモニウムイオン、中間代謝産物のうちどれが凝集運動を誘導しているかを明らかにする。 葉緑体の偏在運動がC3植物全般で起こるかを明らかにするとともに、偏在運動の生理的意義を明らかにする。C4植物葉肉葉緑体の凝集運動とC3植物の偏在運動は移動方向が異なるが、青色光や低CO2条件といった同じ誘導条件が関わるため、葉緑体運動誘導機構の解明のための比較実験を行う。
|
Research Products
(15 results)