2020 Fiscal Year Annual Research Report
イネの穂数と稔実歩合に関与する耐塩性遺伝子の作用機構と集積効果の解明
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20H02969
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平井 儀彦 岡山大学, グローバル人材育成院, 教授 (80263622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 芳行 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (70263621)
冨田 朝美 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (00846529)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イネ / 耐塩性 / 収量 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩害地におけるイネの収量向上のためには,長期塩条件での収量形質に関する耐塩性が必要であるが,その耐性機構および関連遺伝子は不明であり,耐塩性品種の育成は進んでいない.これまでに染色体断片置換系統を用いて,長期塩条件における穂数の維持あるいは稔実歩合の維持に関わる3つの量的形質遺伝子座(QTL)を見いだしている.そこで,耐塩性品種ノナボクラ由来の穂数の維持に関わる耐塩性QTLの領域の絞り込みを行うため,作出した準同質遺伝子系統を用いて,長期塩条件における穂数の比較を行った.その結果,耐塩性系統と感受性系統の間で,穂数に明確な差が認められなかった.これは,塩処理開始後1ヶ月間の天候が不順で,日射量が不足したことにより,栄養成長期間に十分なストレスが与えられなかったためと考えられた.そこで2021年の耐塩性領域の絞り込みに向けて,準同質遺伝子系統を複数作出した.また,稔実歩合の維持に関わる染色体領域の絞り込みを行うため,準同質遺伝子系統を用いて塩処理を行い,稔実歩合とそれに関連する形質の調査を行った.しかし,開花期の気温が高く,ビニールハウス内はさらに高温となったため,対照区および塩処理区において,高温不稔が多発した.特に,開花日に高温にさらされた系統は,稔実歩合が低くなった.一方,開花直前に採取した穂の花粉稔性は耐塩性系統で高い傾向が認められたことから,高温年以外に再度検証する必要があると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年の7月に雨や曇天が多く,塩処理後1ヶ月の日照時間が短かったため,栄養成長期に十分な塩ストレスが与えられず,穂数の維持に関わる耐塩性QTL領域の絞り込みがほとんど進まなかった.また,開花期の気温が高く,ビニールハウス内が高温となり,対照区および塩処理区において,高温不稔が多発した.特に,高温日に出穂した系統では,稔実歩合が低く,稔実歩合に維持に関わる耐塩性QTL領域が検出されなかった.一方,2021年の塩処理実験に向けて,準同質遺伝子系統を作出し,準備を進めた.
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Strategy for Future Research Activity |
栄養成長期の天候不良の影響を避けるため,播種期を早めることで,栄養成長期に十分な塩ストレスが与えられるように対応する.また,夏の高温対策として,ビニールハウスの換気を改善し,開花期の高温障害をできるだけ回避する.これらの対策を行った上で,耐塩性QTLの絞り込みを行うとともに,生理的機構の検討を行う.
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