2022 Fiscal Year Annual Research Report
イネの穂数と稔実歩合に関与する耐塩性遺伝子の作用機構と集積効果の解明
Project/Area Number |
20H02969
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平井 儀彦 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (80263622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 朝美 岡山大学, 環境生命科学学域, 助教 (00846529)
村田 芳行 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (70263621)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イネ / 耐塩性 / 収量 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩害地におけるイネの収量向上のためには,長期塩条件での収量形質に関する耐塩性が必要であるが,その耐性機構および関連遺伝子の解明が求められている.前年に,コシヒカリの第6染色体の一部がノナボクラに置換された系統において,穂数の維持に関わる染色体領域が約2.5Mbであることが明らかになり,この領域のQTL解析を行った.その結果,この領域には,2つの高いLOD値が検出され,穂数の維持に関わる2つのQTLが存在すると推定された.さらに,RNA-seq解析の結果,両QTLに複数の候補遺伝子が推定された. また,コシヒカリの遺伝的背景に第2染色体の一部がIR64 の染色体に置換された系統の SL2007とコシヒカリを交配して得られた後代系統のQTL解析から,収量に関するQTLは2.5Mbの領域にしぼりこまれた.そこで,準同質遺伝子系統を作出し,収量に関わる領域の絞り込みを行ったところ,約1.4Mbの領域に絞り込まれた. さらに,コシヒカリの遺伝的背景に第2染色体の一部がノナボクラの染色体に置換された系統の SL506とコシヒカリを交配して得られた後代系統を用いたQTL解析から,穂数の維持に関わる約3MbのQTL領域が推定され,準同質遺伝子系統を作出して領域の絞り込みを進めてきたが,絞り込まれた領域の耐塩性の効果が小さいことが明らかになった.そこで,再度,約3MbのQTL領域について,再調査を行った結果,この領域には少なくとも2つの穂数の維持に関するQTLが存在すると推定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
塩条件における収量の維持に関わるQTL領域の絞り込みを進めた結果,同領域に出穂期関連遺伝子が含まれ,準同質遺伝子系統間で出穂日のずれが生じ,開花期の稔実に関わる生理的実験,ならびに耐塩性候補遺伝子の検討が困難であった.このため,出穂期関連遺伝子を含まない準同質遺伝子系統の作出が必要となった.約1000系統から選抜し長期塩処理下での実験を行い,収量の維持に関わるQTL領域は約1.4Mbに絞り込まれたが,この領域にも出穂期関連遺伝子が含まれた.そこで,さらに1000系統からの準同質遺伝子系統の作出を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
コシヒカリの遺伝的背景に第2染色体の一部がIR64 の染色体に置換された後代系統については,出穂関連遺伝子を含まない準同質遺伝子系統を作出し,収量の維持に関わる耐塩性QTLの領域の絞り込みを行う.また,第2染色体の穂数の維持に関わるIR64由来のQTL領域については遺伝子発現解析を行い,候補遺伝子の検討を行う.第2染色体の穂数の維持に関わるノナボクラ由来のQTL領域については領域の絞り込みを行う.
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