2021 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原糸状菌の形態形成と感染適応戦略のネットワーク解析
Project/Area Number |
20H02989
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
久保 康之 摂南大学, 農学部, 教授 (80183797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小玉 紗代 摂南大学, 農学部, 助教 (10824039)
西内 巧 金沢大学, 疾患モデル総合研究センター, 准教授 (20334790)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 植物病原糸状菌 / 炭疽病菌 / 形態形成 / 病原性 / シグナル受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題1 植物表層環境の認識と侵入器官形成を制御するシグナル受容とネットワーク解析 NDRキナーゼの制御ネットワークの詳細を解明することを目的とし、NDRキナーゼネットワークに関わる制御因子の解明を行う。そこで、阻害剤(1-NA-PP1)を用いて、条件的に活性阻害を行い、変異導入をとスクリーニングをおこなったが、サプレッサー変異株の取得には至らなかった。その問題点を回避する方法として、温度感受性変異株の取得を進め、候補株を2菌株取得することに成功し、次世代ゲノムシークエンスにより、候補変異候補遺伝子を同定した。一方、植物シグナル受容系の同定のための順遺伝学的解析でNDRキナーゼと並行して機能する新規のキナーゼの関与を見出した。さらに、付着器からの侵入時において、アルコール酸化酵素がペルオキシダーゼと共役し、植物細胞表面の長鎖脂肪酸を酸化し、生起したアルデヒドが付着器侵入のシグナル分子として機能していることを支持するデータを得た。 課題2 病原糸状菌の感染器官の形態形成におけるNDRキナーゼネットワークの細胞内相分離の関与 炭疽病菌におけるSsd1タンパク質のストレス顆粒形成と相分離への関与を評価するために、出芽酵母のRNA結合タンパク質Pbp1のウリ類炭疽病菌相同遺伝子CoPBP1に変異を導入し、病原性の評価をしたところ、病原性の微弱な低下が確認された。一方、Pbp1の局在は現在のところ、明確な結果は得られていない。ウリ類炭疽病菌において、メラニン合成は病原性に必須である。メラニン合成初期過程のポリケチド合成酵素が翻訳後に多量体形成をするという二次代謝産物の代謝制御において世界的にも報告事例のない発見をした。今後、多量体形成と細胞内相分離の関連を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1 植物表層環境の認識と侵入器官形成を制御するシグナル受容とネットワーク解析については、変異株の取得とゲノム解析により、変異遺伝子候補の同定を行った。また、宿主シグナル受容に関与する新たなキナーゼ系の同定と、付着器侵入におけるシグナル分子の生成機構について、新知見をえることができた。 課題2 病原糸状菌の感染器官の形態形成におけるNDRキナーゼネットワークの細胞内相分離の関与については、細胞内相分離に関与する因子Pbp1の同定と、本因子が病原性に関与する可能性を見出した。 以上のことから、一部の計画が想定していたより、進捗が遅れているが、全体計画としては、独創性の高い新発見につながる基礎データを得つつあることから、概ね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
植物シグナル受容系の同定のための順遺伝学的解析で、付着器形成に関与する新規のNDRキナーゼ見出した。さらに、付着器からの侵入時において、細胞表層の病原菌の酵素反応によって生起した長鎖アルデヒドが付着器侵入のシグナル分子として機能していることを支持するデータを得ている。植物細胞表層における植物病原菌のシグナルネットワークの統合的モデルの提示を目標地点において、研究を進める。
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[Book] 農学概論2022
Author(s)
久保康之(編)
Total Pages
175
Publisher
朝倉書店
ISBN
978-4-254-40025-0