2020 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on host switching mechanism of phytoplasma infecting plants and insects
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20H02991
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大島 研郎 法政大学, 生命科学部, 教授 (00401183)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ファイトプラズマ / ゲノム / 宿主 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファイトプラズマ(Candidatus Phytoplasma属細菌)は昆虫媒介性の植物病原細菌であり、植物宿主と媒介昆虫との2つの宿主間を水平移動するホストスイッチングにより感染を拡大する。昆虫によって媒介される植物病原体は、地球温暖化とともにその感染範囲を拡大させており、こうした病気を防ぐことが近年の重要な課題となっている。本研究ではファイトプラズマが宿主を操作する分子メカニズムに焦点を当て、宿主の細胞機能を制御するホストマニピュレータータンパク質の機能を解析する。ファイトプラズマは植物・昆虫の細胞内に寄生するため、ファイトプラズマから分泌されたタンパク質は宿主の細胞質で直接的に機能する。分泌シグナルを持つタンパク質は宿主を操作するホストマニピュレーターの最有力候補であるため、ファイトプラズマゲノム上にコードされる分泌タンパク質を探索し、その機能を解析する。令和2年度は、花器官形成に関わるMADSドメイン転写因子に結合し、分解を誘導して花器官の葉化を引き起こすPHYL1タンパク質について、多種・多系統のファイトプラズマからの網羅的探索を行った。PHYL1の保存領域に対してプライマーを設計し、PCR及びgenome walkingにより全長配列を特定する方法を確立した。網羅的探索の結果、9種25系統のファイトプラズマからPHYL1遺伝子の部分配列が検出・解読され、そのうち9系統については全長配列を決定した。以上より、既報の知見と合わせて少なくとも11種59系統の幅広いファイトプラズマがPHYL1遺伝子をもつことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、ファイトプラズマの葉化誘導因子であるPHYL1の網羅的探索を行った。PHYL1の全長配列を特定する方法を確立することにより、多種・多系統のファイトプラズマのPHYL1を比較解析することが可能となった。系統解析の結果、PHYL1は4グループ (phyl-A, -B, -C, -D) に分かれ、16S rRNA遺伝子に基づく系統関係と一致しなかったことから、PHYL1はファイトプラズマ属の進化とは独立に進化を遂げていることが示唆された。また、phyl-BはA・EクラスのMADSドメイン転写因子との結合能、および分解能を喪失し、植物に葉化を誘導しないことが明らかとなった。本成果は、宿主の細胞機能を制御するホストマニピュレータータンパク質について進化的、および機能的な観点から迫るものであり、おおむね順調に進展しているとの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
ファイトプラズマは植物・昆虫の細胞内に寄生し、またペプチドグリカン等の細胞壁を持たないため、ファイトプラズマから分泌されたタンパク質は宿主の細胞質で直接的に機能する。従って、分泌シグナルを持つタンパク質は宿主を操作する因子の最有力候補である。本研究により、分泌タンパク質の一つであるPHYL1は4グループ (phyl-A~D) に分けられ、phyl-BはA・EクラスのMADSドメイン転写因子との結合能、および分解能を喪失していることが明らかとなった。今後は、これらの知見に基づいて宿主側のタンパク質との相互作用に関わるアミノ酸残基など、機能を発揮するのに重要なモチーフを特定する。また、さらにファイトプラズマの分泌タンパク質を探索するため、複数系統のファイトプラズマのドラフトゲノムを解読する予定である。
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