2022 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on host switching mechanism of phytoplasma infecting plants and insects
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20H02991
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大島 研郎 法政大学, 生命科学部, 教授 (00401183)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ファイトプラズマ / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
ファイトプラズマ(Candidatus Phytoplasma属細菌)は昆虫媒介性の植物病原細菌であり、植物宿主と媒介昆虫との2つの宿主間を水平移動するホストスイッチングにより感染を拡大する。本研究ではファイトプラズマが宿主を操作する分子メカニズムに焦点を当て、宿主の細胞機能を制御するホストマニピュレータータンパク質の機能を解析する。ファイトプラズマは植物・昆虫の細胞内に寄生し、またペプチドグリカン等の細胞壁を持たないため、ファイトプラズマから分泌されたタンパク質は宿主の細胞質で直接的に機能する。従って、分泌シグナルを持つタンパク質は宿主を操作する因子の最有力候補である。まず、昨年度までの研究により収集した分泌タンパク質遺伝子のうち、昆虫を誘引する機能が推定されるPOSE4について解析を行った。POSE4-YFP融合タンパク質を植物体内で一過的に発現させ、細胞内局在を観察したところ、POSE4は主に核に局在することが分かった。POSE4が相互作用する宿主因子を酵母ツーハイブリッド法により調べた結果、葉の形態発生に関わる転写因子TCP2と相互作用することが示唆された。また、葉化を誘導する分泌タンパク質であるPHYL1がSEP3(MADSドメイン転写因子)とRAD23(ユビキチン化タンパク質をプロテアソームへ運搬する因子)に相互作用することをこれまでに明らかにしてきたが、今年度はPHYL1がSEP3を分解する分子機構について解析した。SEP3の分解にユビキチン化が必要かどうかを調べるために、ユビキチンの結合残基であるリジンを全てアルギニンに置換したPHYL1・SEP3を使用して分解アッセイを行った。その結果、リジンを全てアルギニンに置換した変異体を使用してもSEP3が分解されることが明らかとなり、PHYL1はユビキチン非依存的にSEP3を分解することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、宿主の細胞機能を制御するホストマニピュレータータンパク質の機能を解析することに焦点を当て、相互作用する宿主因子の特定や、宿主因子を分解するメカニズムを明らかにした。本成果は、ホストスイッチングにおける宿主操作を担うホストマニピュレータータンパク質について機能的な観点から迫るものである。またプロテアソームを利用して標的因子を分解するにもかかわらず、ユビキチン化を必要としないユニークな分解機構は他の生物では見られないものであり、ファイトプラズマの宿主操作を解明する上での重要な知見が得られたことから、おおむね順調に進展しているとの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度までの研究において、ホストマニピュレータータンパク質の候補となる分泌タンパク質遺伝子を収集するとともに、分泌タンパク質それぞれの機能解析を進めてきた。今後も分泌タンパク質が相互作用する宿主因子を特定するとともに、作用機作の分子機構の解析を進める。特に、PHYL1がMADSドメイン転写因子SEP3を分解するメカニズムは非常にユニークであり、RAD23と直接的に相互作用することによってユビキチン化を経ずにSEP3をプロテアソームへ運搬することが示唆されている。今後はSEP3と相互作用するのに必要なPHYL1のアミノ酸残基を特定し、PHYL1-SEP3-RAD23の三者間の相互作用様式について解析を行う予定である。
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