2020 Fiscal Year Annual Research Report
ホタルの全ゲノム情報と人工飼育ホタルを用いた、昆虫の新奇形質獲得メカニズムの解明
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20H03002
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
大場 裕一 中部大学, 応用生物学部, 教授 (40332704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新美 輝幸 基礎生物学研究所, 進化発生研究部門, 教授 (00293712)
重信 秀治 基礎生物学研究所, 新規モデル生物開発センター, 教授 (30399555)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘイケボタル / ホタル / ゲノム / ポストゲノム / 発光器 / 生物発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポストホタルゲノムの課題のうち、larval RNAiについてはdoublesex遺伝子のノックダウンによる発光器およびその他ホタルに特徴的な性的二型の進化発生学的メカニズムの解明を目指した研究を行い、まず幼虫の雌雄判定の方法確立を検討した。詳細な顕微鏡観察を行ったが、外部形態に違いは全く見出せなかった。次に、終齢幼虫の体長と体重による判別を試みたが、雌雄で統計的に有意な差はあるものの、特定の1個体を判別することはできないことが分かった。CRISPRについては、メスに産卵させる産卵床の改良を行い、効率よく受精卵を得る方法を確立した。Doublesex遺伝子のトランスクリプトの解析を進めた。まずはRNA-seqの結果の解析を行い、doublesex遺伝子のトランスクリプトをいくつか抽出することができたが、これまでの甲虫の研究例から考えて相当数のトランスクリプトがあるはずなので、RNA-seqの解析だけでは網羅できないことが推察された。 黒化個体系統の責任遺伝子特定のために黒化個体のリシーケンスを行った。リシーケンス結果の解析を行ったところ、候補遺伝子が大量に見つかり、これ以上絞り込むことが不可能であることが分かった。 野外個体のリシーケンスを進めた。知多郡東浦町の個体群が減少しつつあることに注目し、行動の観察を進めた。ヘイケボタルのオス成虫に特有のまたたきを伴った発光シグナルに生態学的な意味があるかもしれないので、ビデオ記録などを進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Larval RNAiの準備としてヘイケボタルの幼虫時における雌雄判別法の探索を続けたが、外部形態および体長・体重といった観察のみから判別する方法のあらゆる検討は失敗した。 黒化個体のリシーケンスの結果をすでに取得済みであった野生型個体のゲノムデータと比較した。黒化異常は劣勢でメンデル遺伝すると考えられるので、黒化個体でホモであるが野生個体でヘテロになっている遺伝子変異を探してデータ解析したが、SNPが多すぎて責任遺伝子を絞り込むことができなかった。目視で候補となる変異を調べたが、それでも特定には至らなかった。黒化個体の形態的特徴について論文を発表した(川野ら, 2021)。これにより、外部形態からは気がつかなったが、黒化個体は複眼のクチクラも黒化しており視覚が失われていることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
外部形態および体長・体重といった個体を弱らせないような方法での雌雄判別法は確立できないことが明らかになったので、今後は、個体を弱らせることになっても判別できる方法の確立を目指し、内部形態や性特異的遺伝子の発見などを試みる必要がある。 黒化個体の責任遺伝子の発見については、黒化個体そのもののリシーケンスでは特定できないことが分かったので、野生型との交配実験によるF2の作成とその大規模MutMap解析の準備を開始する必要がある。黒化個体の視覚が失われていることがわかったので、F2個体が得られた場合にもその形態を調査する。
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