2022 Fiscal Year Annual Research Report
長距離ジーンフローが卓越する針葉樹でなぜ高標高エコタイプが存在しうるのか?
Project/Area Number |
20H03021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60323474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 系子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00343814)
内山 憲太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40501937)
久本 洋子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60586014)
津山 幾太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80725648)
石塚 航 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林業試験場, 主査 (80739508)
種子田 春彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90403112)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分布辺境仮説 / 遺伝子流動 / トドマツ / 自殖 / 開花期 / 葉緑体SSR / 局所適応 / 高標高 |
Outline of Annual Research Achievements |
中心辺境仮説では、個体群サイズの大きい分布中心から分布の端へのジーンフローが起こるが、分布の端の環境に適応できないために、分布範囲が制限されるとされる。本研究では、標高別の開花時期を調査するとともに、高標高産個体から球果を採取して、分布中心である600m集団、900m集団から分布の端である高標高の1200m集団へと遺伝子流動が起こっているかどうかを調べた。開花期の調査を行った結果、600mと1200mでは明確な時期のズレが生じていたが、900mと1200mでは開花期の重なっていた。母樹10本から3つの球果を採取し、球果ごとに実生を育成し、DNAを抽出した。高標高に分布する全107個体の針葉からDNAを抽出し、これらを花粉親候補として本研究で開発したトドマツcpSSRマーカー17座でジェノタイピングを行った結果、父親候補107個体で、102の遺伝子型が得られた。3球果×16サンプル×10母樹(480実生)を解析した結果、母樹ごとに花粉親の構成をみると、個体MT03, MT04, MT02は少なくとも1母樹の50%以上の実生の花粉親となっていた。こうした花粉親としての貢献度が個体サイズに依存するかどうか検討したところ、胸高直径25㎝以上の個体の貢献度が大きいものの個体サイズが大きいにもかかわらず、ほとんど花粉親となっていないこともあることが判明した。自殖率は個体による変動が大きかったが、とくにMT02とMT04については近隣に個体サイズの大きな花粉親候補がいるにもかかわらず、実生の自殖率は50%となっていた。全体では、自殖率が22%と高く、外部花粉の割合が低い(8%)ことが判明した。すなわち、分布辺境仮説の前提である、分布中心から分布の端へと遺伝子流動が起こるということは開花期のズレでほとんど集団外からのジーンフローが起こっていないことが示された。また、自殖率が高く、近交弱勢の遺伝子がすでに除かれて、自殖可能になっている可能性がある。
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Research Progress Status |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(6 results)