2022 Fiscal Year Annual Research Report
森林昆虫の多様性研究の新展開:駆動力としての昆虫関連微生物の存在意義の検証
Project/Area Number |
20H03026
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梶村 恒 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10283425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
升屋 勇人 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70391183)
神崎 菜摘 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70435585)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 昆虫 / 菌類 / 線虫 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
アイノキクイムシ体内の共生菌Fusarium kuroshiumと、体表で随伴している病原菌Ceratocystis ficicolaを、イチジク苗木に接種した結果、F. kuroshiumは、C. ficicolaとの組み合わせで、C. ficicola単独よりも苗木を早く萎凋させ、材部を広く壊死させた。これは、キクイムシ共生菌の新たな害菌化パターンで、生立木を利用可能にする戦略である。また、イチジク樹から採集したアイノキクイムシを人工飼料で累代飼育した個体群では、共生菌として、Neocosmospora metavoransと、新たな系統のFusarium属菌が見出された。したがって、アイノキクイムシは営巣場所に適応して共生菌を転換した可能性がある。 イタドリの葉に共生菌を接種して揺籃を作成するカシルリオトシブミと、イタドリの花外蜜腺に誘引されるアリの相互作用を実証した。 全国各地のアイノキクイムシ、トドマツオオキクイムシの共生菌として、それぞれ、F. kuroshium、Fusarium oligoseptatumが分離された。また、デイゴの樹皮からFusairum pseudensiformeが分離された。本種はデイゴ軟腐症状を起こす病原菌だが、樹皮常在菌であることが明らかとなった。F. pseudensiformeは、F. kuroshium、F. oligoseptatumと同じ系統に含まれることから、樹皮常在菌から派生したFusairumがキクイムシと共生し、一方で樹木病原菌となったものと推察される。 クロコブゾウムシ特異的に便乗する線虫、Caenorhabditis niphades を検出、記載し、そのゲノム解析を行った。Euwallacea属キクイムシからRuehmaphelenchus属線虫2種を検出、記載し、共生菌を餌としている可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた、①供試虫の捕獲・同定と生態調査、②菌類貯蔵器官(mycangia)の探索、③菌類の分離・同定、線虫の分離・同定、④相互作用系の解明、⑤系統地理学的解析について、現地協力者に供試虫の送付を依頼するなどして実施できた。 養菌窃盗性キクイムシの生息する西表島での調査が行えなかったが、これまでのデータを整理・検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度のため、取りまとめを進めながら、可能な限りデータの補完を行い、再現性も確認する。
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