2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20H03032
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
市榮 智明 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (80403872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上谷 浩一 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80638792)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 太平洋型ブナ / 結実豊凶 / 温暖化 / 不稔 / 炭素安定同位体比 / 林冠 / 遺伝的多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度にブナが大量開花した茨城県の小川ブナ希少個体群保護林において、ブナ集団内の遺伝的多様性をマイクロサテライトマーカー用いて評価した。その結果、これまで報告された他地域のブナ集団の遺伝的多様性と同等の多様性を持つことがわかった。つまり、長期間の不稔現象の原因の一つであると考えられる遺伝的多様性低下による近交弱勢の可能性は、小川ブナ希少個体群保護林においては否定された。
また、集団内の近距離および遠距離に生育する個体を花粉親とした交配実験を同保護林で行ったところ、距離に関係なく通常より高い結実率が確認された。さらに、樹冠部の先端枝に袋掛けして虫害を排除した状態で種子の稔性を調査したところ、これまでに報告された研究結果と同様、小川のブナも高い自家不和合性を示した。令和2年度は4月から10月にかけて毎月1~2回、落下前の樹上殻斗の食害状況を確認したが、小川のブナはほとんど種子食性昆虫による食害を受けていなかった。林床にリタートラップを設置して小川のブナの結実率を調べたところ、開花規模は大きかったもののほとんど結実していないことがわかった。
加えて、日本海型のブナとして山形大学および鳥取大学の演習林において、太平洋型のブナとして小川希少個体群保護林および高知農業高校の演習林において、各集団のブナ30個体から木部コアを採取した。現在は採取した木部コアから年輪解析および炭素安定同位体比の分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルス感染症の影響で、フィールド調査の計画が予定より若干遅れているものの、その分炭素安定同位体比の分析などを優先的に行うことにより、全体的な進捗としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ブナの開花・結実は大よそ隔年で起こるため、令和4年度は予定している多くの調査地で今日咲く年になることが予想される。その間に令和2年度に採取した試料の分析やデータの解析を進め、令和4年度に予想される開花・結実に対する準備を進める予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 木本植物の生理生態2020
Author(s)
小池 孝良、北尾 光俊、市栄 智明、渡辺 誠
Total Pages
264
Publisher
共立出版
ISBN
978-4-320-05812-5