2021 Fiscal Year Annual Research Report
細胞壁形成の日周性が解き明かすセルロースミクロフィブリル束形成の仕組みと物性発現
Project/Area Number |
20H03042
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 正人 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30242845)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞壁形成 / セルロースミクロフィブリル |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞壁二次壁の発達、肥厚は細胞壁成分が新生面に堆積していくことである。この成分堆積に生育環境である光の日周性はどう影響しているのか。本研究は形成された細胞壁の微細構造にその解を求めた。セルロースミクロフィブリルの集合・束形成と日周性の関係を明らかにすること、さらにセルロースミクロフィブリル束サイズや分布が細胞壁の物性発現にどう関わっているかを明らかにする研究に取り組んだ。 (1)人工気象器で前年と同じく針葉樹苗木を明暗周期を制御して生育した。前年の研究から、細胞壁の物性発現研究には、成長量を増やす必要があると判明しているため、施肥および活力剤の投与を試み、前年に比べて肥大成長量を増やす条件を設定できた。また、広葉樹細胞壁との比較を視野にいれ、人工気象器で広葉樹苗木の調整生育も行った。これらにより、物性発現解析に利用できる、明期が長い条件で形成された細胞壁と暗期が長い条件で形成された細胞壁を調整することに成功した。 (2)走査型プローブ顕微鏡によるセルロースミクロフィブリルのサイズ解析を改善した。セルロースミクロフィブリルのサイズを測るプローブ顕微鏡は静電気の影響を受けやすい。そこで筐体を設置することで解析遂行率を向上させた。明期が長い条件でできた細胞壁では、ミクロフィブリルが集合しやすく束が大きくなることが分かった。 (3)物性解析のために用いる微小な試料を扱える力学試験機を導入し、試験に適した試料サイズや条件を探った。引張試験の結果は、暗期が長い条件でできた細胞壁の方が強い傾向があり、ミクロフィブリル束サイズがより均一であることが強さに関係していると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施により、得たい情報を蓄積することができた。また、次の研究の指針も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
日周性を制御した条件で細胞壁試料を調整し、細胞壁におけるセルロースミクロフィブリル束のサイズと分布様式の解析を行う。これにより形成の日周性が細胞壁微細構造にどう影響するかを明らかにしていく。細胞壁の力学性能を評価する新たな試験法を検討していく。
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