2020 Fiscal Year Annual Research Report
Applications of metabolic diversity of basidiomycetes for construction of chemical library of sesquiterpenoids
Project/Area Number |
20H03045
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
一瀬 博文 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00432948)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 担子菌 / セスキテルペノイド / シトクロムP450 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、天然物合成に使えそうな酵素を担子菌類 (キノコ) から掻き集め、自由自在に組合わせて、魅力ある天然物「セスキテルペノイド」の化合物ライブラリを構築する。具体的には、① セスキテルペン骨格合成酵素とシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450酵素)を様々な担子菌から獲得し、② 骨格合成酵素とP450酵素を「網羅的・非合目的・非生物学的」に組合わせて様々なセスキテルペノイドを創り出し、③「多様・稀少・疑似天然」を特徴とする新奇な化合物ライブラリを完成させる。 本年度は、種々の担子菌からセスキテルペン合成酵素およびシトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)遺伝子のクローニングを実施した。セスキテルペン合成酵素においては、7種の担子菌ゲノムデータベースを精査して123種類の候補遺伝子を見出し、各種の培養条件で生育させた担子菌からRT-PCRによるクローニングを進めることで86種類の関連遺伝子をcDNAとして獲得した。また、セスキテルペン合成酵素を酵母Saccharomyces cerevisiaeに形質転換することで、27種類のセスキテルペン骨格分子を得ることを可能にした。さらに、P450遺伝子のクローニングにおいては、白色腐朽担子菌 Trametes versicolor が有する全P450の78%に相当する145種類の遺伝子をcDNAとして獲得した。酵母を宿主とするP450発現プラスミドを構築しており、次年度以降はセスキテルペン合成酵素とP450の共発現により多彩なテルペノイドの合成に挑む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画は全て順調に達成された。 本年度は、研究計画の基盤となる「セスキテルペン合成酵素」および「シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(P450)」の遺伝子クローニングを中心に検討を進めた。当初計画においては、10種の担子菌に由来する100種類のセスキテルペン合成酵素およびTrametes versicolorが有する全P450のクローニングを達成目標に設定しており、本年度内において数値目標の80%を達成している。クローニングに至らなかった候補遺伝子は転写がなされないと考えられ、クローニングを断念して次年度以降の計画を遂行する。 クローニングに成功した担子菌遺伝子は、酵母を宿主とする異種発現系の構築を進めており(一部は完成している)次年度以降の検討を速やかに遂行する準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度において、7種の担子菌から86種類のセスキテルペン合成酵素をクローニングすることに成功した。当該酵素が産生するセスキテルペン骨格分子の一部については、GC-MSを用いた解析から生成物の構造推定にも至っている。今後は、未知の骨格分子を高度に精製した後、NMR等を用いて化学構造を決定することで、担子菌類におけるセスキテルペン骨格分子の構造多様性に関する知見を拡充する。 さらに、研究代表者が保有するP450およびセスキテルペン合成酵素を酵母に異種発現させ、多種多様なセスキテルペノイドの合成を達成する。本研究において新たに145種類のP450遺伝子を獲得したことにより、656種類の糸状菌P450の機能を追跡することが可能になった。今後は、「セスキテルペン合成酵素と P450 の組合わせ」を網羅的に追跡して反応の可否を追跡し、多種多様なセスキテルペノイドの産生を達成する。また、獲得する各種セスキテルペノイドの生物活性を探究する。具体的には、(i)グラム陰性菌およびグラム陽性菌に対する抗菌活性、(ii)各種ガン細胞を用いた抗腫瘍活性を対象として活性の評価を実施する。
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