2020 Fiscal Year Annual Research Report
新たな免疫療法を拓く食用担子菌薬理成分の単離と作用機序解明
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20H03048
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
原田 栄津子 (石井 栄津子) 宮崎大学, 農学部, 助教
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Project Period (FY) |
2020 – 2021
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Keywords | オオシロアリタケ / 人工栽培化 / 抗菌活性 / 抗ガン活性 / 難治性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜熱帯性食用担子菌オオシロアリタケ属菌は、アジアやアフリカに自生し濃厚な旨味を持つ高級食材である。昆虫と共生パートナーになり生活環を維持している共生菌であり、近年生理活性化合物の学術報告が相次いで発表されている注目の食用きのこである。このきのこの成分はリウマチ、高血圧、肥満症、クワシオルコル、慢性下痢などに対する予防効果が報告されている。オオシロアリタケ属菌の人工栽培で子実体の発生が困難であることからこのきのこを大量に収集することが難しい。しかし、最近、人工栽培でオオシロアリタケ属菌の菌糸体の発生が可能であると報告されている。そこで、本研究では良好な菌糸体を大量に収集するため、菌株の選抜及び最適な栽培条件の検討を行った。沖縄本島より収集したオオシロアリタケ属菌の45菌株を寒天培地、固体基質、高二酸化炭素レベルなどを用いて分離培養を行った。その結果、45菌株のうち5菌株が良好な菌糸体の発生が認められた。栽培培地の検討の結果、PDA(ポテト抽出液、デキストロース、寒天)の培地又は個体培地よりもバーク堆肥を基材とした培地で菌糸伸長が良好であった。また、すべての菌株では高二酸化炭素レベルよりも正常範囲の二酸化炭素レベルでの菌糸体成長が良好であった。内部転写スペーサー領域の遺伝子解析を行ったところ、選抜した5菌株がオオシロアリタケ属菌であることが確認された。次に、5菌株のメタノール、酢酸エチル、熱水の抽出液を作製し、各々の抽出液を用いて、大腸菌と黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性、肺腺癌の細胞株であるA549細胞に対する抗ガン活性を検討した。その結果、オオシロアリタケ属菌の抽出液は抗菌活性が確認されなかったが、抗ガン活性が認められ、ガンに対する治療薬としての応用の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りにこれまでの調査活動から種々のキノコの菌株を収集することができましたので順調に成果を得ることができました。また、収集した45菌株のうち5菌株が良好な菌糸体の成長を示したので、メタノール、酢酸エチル、熱水などを用いて抽出液の準備が可能であった。また、栽培したキノコから十分なDNAの量を得ることできたので遺伝子学的な検査で選抜した5菌株がオオシロアリタケ属菌であることも確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
オオシロアリタケ属菌の成分は高血圧症、肥満症、クワシオルコル、慢性下痢などの慢性疾患に対する保護的な効果を示すことが報告されている。しかし、ガン細胞の成長・浸潤に対する抑制効果があるかについて明らかではない。そこで、本研究ではヒト由来の肺胞上皮細胞株であるA549細胞とマウス由来のB16.F10のメラノーマ細胞を用いてガン細胞による免疫回避の機序に関わる免疫チェックポイント分子及び受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバーであるAx1の発現に対する抑制効果を検討する。免疫チェックポイント分子としてprogrammed death ligand 1 (PD-L1)とPD-L2に着目して検討を行う。先ず、in vitro実験においてA549細胞及びB16.F10細胞を各々の菌株のメタノール、酢酸エチル、熱水の抽出物の存在下で24時間培養した後、フローサイトメトリー法、ウェスタンブロット法、PCR法でAx1、PD-L1、PD-L2の発現を検討する。5菌株の抽出物の用量依存性又は時間依存性の検討を行う。In vitro実験で効果を示す菌株の抽出物の濃度を用いてin vivoの実検を計画する。In vivo実検ではメラノーマB16.F10細胞をC57BL/6マウスの皮下注射し、腫瘍の形成を観察し、腫瘍が大きくなったマウスを選抜し、腫瘍の大きさでマッチさせた二群に分ける。一つのマウス群(投与群)には菌株の抽出物を週3回と抗ガン剤(シスプラチン)週1回、それぞれ4週間投与し、腫瘍の大きさを経時的に測定する。もう一つのマウス群(非投与群)には同様のスケジュールで生理食塩を投与する。実験終了後、両群のマウスを解剖して病理標本を作り、腫瘍の状態、重さ、大きさ、諸臓器の異常を顕微鏡観察して、比較検討する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Plant growth regulators and Axl and immune checkpoint inhibitors from the edible mushroom Leucopaxillus giganteus2020
Author(s)
Malya IY, Wu J, Harada E, Toda M, D'Alessandro-Gabazza CN, Yasuma T, Gabazza EC, Choi JH, Hirai H, Kawagishi H.
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Journal Title
Bioscience, Biotechnology & Biochemistry
Volume: 84
Pages: 1332-1338
DOI
Peer Reviewed