2020 Fiscal Year Annual Research Report
炎症再生医学と神経科学からのアプローチによるきのこの多機能性発現メカニズムの解明
Project/Area Number |
20H03050
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
江口 文陽 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (60337467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 紀子 女子栄養大学, 栄養学部, 専任講師 (20348147)
美谷島 克宏 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80786492)
岡戸 晴生 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (60221842)
高橋 信之 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50370135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | きのこ / 抗炎症 / 神経科学 / 脳内モノアミン / 機能性物質 / 血小板凝集抑制 / ケモカイン遺伝子発現抑制 / 担子菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
複合成分から構成されるきのこは、成分を分離分画すると機能性は大幅に減弱する。きのこ粗抽出物は、小腸透過性を有し、脳内に到達する可能性を確認した。きのこの多機能性は、複合成分が脳内代謝を介し、脳内 物質に影響をおよぼすことで各臓器のホルモンや酵素に変化をもたらし、機能回復、免疫亢進、抗炎症、疾患の予防と治療に効果を発揮するとした仮説の「問い」に答えるため“きのこ⇒脳内物質の産生⇒多岐にわたる疾患の改善”というstepのはざまに焦点をあて、血小板凝集抑制、炎症抑制、産生される脳内物質産生を指標として、30種類に及ぶ試料(きのこの品種や菌株)でのスクリーニングを実施した。 本研究によって、特にテングタケ属のきのこによって産生される物質に高い機能性があることが明確となった。産生物質は、脳内モノアミン濃度に変化をもたらし、精神疾患や神経変性疾患に対する予防や治療への効果に作用することが初めて明らかとなった。 ヒトへの毒性物質であるイボテン酸、ムシモールを除去した分画に脳内モノアミン濃度に影響を及ぼすことが明確となり高い有用性を確認した。テングタケが産生する生理活性物質とモノエタノールアミンとの関連性が明確になったことは、今後の研究方法を計画する点からも有用である。また、in vitroにおける各機能性試験から効果が確認されており、テングタケ属のきのこ産生物質は、脳内神経系のみならず多機能性を示すことがわかった。 本研究の実績は、精神疾患や神経変性疾患に対するテングタケ属のきのこ産生物質を用いた新たな新規医薬品や機能性物質の開発の基盤を確立するものである。さらに、スクリーニングの結果ヤマブシタケに脳内モノアミン等に作用する可能性も示されたことから更なるきのこの可能性を見出しつつある。 これらの初年度の成果をもとに次年度以降の研究をさらに推進することの意義と計画が明確となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の感染拡大により、2020年度当初は大学への出勤停止などの措置が講じられ研究の遂行において遅れることが予想されたが、近隣の森林や林への効率的な調査および全国に及ぶきのこ愛好者などの協力が得られたことにより野生のきのこを入手することが可能となった。さらに2020年6月から8月までに研究室にストックされた凍結試料等を駆使して基礎となる試験方法を確立した。 その後晩夏から秋に向けてテングタケ属のきのこが発生するフィールドに集中的に出張して採取を行った。それらのサンプルを前半の研究によって確立したスクリーニング法によって網羅的に解析することができたため当初計画と同じ研究を順調に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
きのこの成分は、各種疾患の病態固有臓器そのものへ直接関与するだけでなく、消化管および血管を介して脳下垂体視床下部や脳神経細胞を構成する各組織(神経細胞の受容体)やシナプスとその周辺組織に作用して“きのこの成分”によって脳内モノアミン産生への感受性が高められることで脳内物質の影響で各臓器にシグナルが送られ、恒常性の亢進とともに生活習慣病(高血圧症、脂質異常症、糖尿病、炎症など)や神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)や精神疾患に起因する各種臓器からのホルモンや酵素などの産生が促され、それらの産生物質が臓器を構成する細胞マトリックスの保護や修復に作用しているのではないかといったことである。 すなわち、抗炎症効果を発現するメカニズムの解明として、各種スクリーニング法を用いた細胞レベルでの評価として遺伝子導入マクロファージ培養株RAW/NFkB-luc細胞を用いて1次スクリーニングし、炎症が惹起された際に活性化される転写因子であるNFkBの活性をレポーター遺伝子のルシフェラーゼで評価して炎症を抑える成分の添加によるルシフェラーゼ活性増加の抑制から抗炎症作用を評価する。 さらに、神経系・脳内物質の産生におよぼす影響と疾患改善メカニズムの解明として、脳内から分泌されるドパミンやアドレナリンなどは、肥満細胞と血小板から放出されたヒスタミンによって一過的に血管を収縮させ、続いて炎症局所(細動脈、細静脈および毛細血管)の血管を拡張させて血流を増加させ熱感や発赤が生じることを抑制することが知られている。この作用メカニズムを活用してきのこから抽出した物質の炎症(血小板凝集を指標とする炎症、ケモカイン遺伝子発現を指標とする炎症、腸管炎症、脳・神経系への炎症)を抑制するin vitro試験における評価を実施する。
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Research Products
(5 results)