2021 Fiscal Year Annual Research Report
Ecological role of marine viruses infecting zooplankton
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20H03057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平井 惇也 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (30762554)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動物プランクトン / ウイルス / 共生寄生 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目である2021年度は引き続き北海道紋別市の海洋モニタリングを活用し、動物プランクトンの採集を行い、研究協力者と連携しDNAおよびRNAが解析可能な試料を得た。1年目の2020年度に得られた試料は、対象種を冬季から春季に優占するカイアシ類Pseudocalanus newmaniとし研究を進めた。1年目に得られたRNA-seqのデータからウイルスの探索を行い系統解析を行ったところ、Picornaviralesに属する2種のウイルスの配列が得られ、どちらも新規ウイルスであることが判明した。2種のうち1種は既存のMarnaviridaeに属すると考えられたが、もう1種は既存の分類群に属さず、他の無脊椎生物のRNA-seqデータから得られたウイルス配列とともに新規グループを形成することが明らかとなった。また、1年目に設計したプライマーおよびプローブを用い、これらの2種の季節変化をRT-qPCRで調べたところ、カイアシ類からの検出率やウイルスコピー数は明瞭な季節変化を示すことが明らかとなり、各ウイルスの季節変化は異なることが明らかとなった。ミトコンドリアCOI領域でカイアシ類のハプロタイプ分析を行い、季節的に集団構造が変化するかを調べたところ、明確な変化は観察されなかった。そのため、ウイルスの増減は遺伝的集団の変化とは関連がなく、調査海域の季節的な環境や、それにともなうカイアシ類の生理応答の変化が大きく影響を及ぼしていると考えられた。また、これまでに得られた成果は各種研究集会(日本プランクトン学会、日本海洋学会、日本生態学会)で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大の影響があり頻繁に採集地に足を運ぶことはできなかったが、研究協力者の協力により継続的に動物プランクトン試料の採集を進めることが出来た。また、当初の予定よりも早く主要な動物プランクトンであるカイアシ類Pseudocalanus newmaniからウイルス配列を取得でき、その季節変化を調べることができた。また、同一個体からDNAおよびRNAを抽出することで、効率的に限られた試料を利用し、研究を進めることが出来た。抽出されたDNAからは集団遺伝解析が可能なミトコンドリアCOI領域を取得し、ハプロタイプの季節変化を調べることもできた。一方、ウイルスがカイアシ類にどのような生理的な変化を引き起こすのか、実際に致死に至るのかなど、生態系におけるインパクトは今後の課題となった。また、主要なウイルスの感染経路もこれまでの研究からは明確な答えが得られておらず、今後の課題となっている。得られた成果は国内および国際学会で研究発表を行い、今後の展開についても他の研究者から貴重な助言をもらうことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
動物プランクトンの個体群動態とウイルスの関係性を探るため、引き続き北海道紋別市オホーツクタワーのおける海洋モニタリングを活用し、動物プランクトンの採集を進める。得られた試料から対象種であるカイアシ類Pseudocalanus newmaniを選別し、個体数の計測を行う。また、DNAおよびRNAを抽出し、これまでの研究で得られた主要なウイルスの季節変化を調べる。2年目までに検出された主要なウイルスの感染経路を探るため、餌となる環境中の植物プランクトンや、多くのウイルスコピー数が検出された個体の消化管内容物の解析を行う。また、垂直伝播の可能性も検証するため、これまで対象としていたカイアシ類の成体のみならず、産卵された卵や未成体個体など、異なる成長段階の個体の解析も行う予定である。さらに、カイアシ類体内のウイルスの局在を調べるため、電子顕微鏡による観察やISH法による検出を検討している。また、ウイルスがカイアシ類にどのような生理的な変化を引き起こすのかを明らかにするため、核ウイルスのウイルス存在下、非存在下の個体の発現遺伝子解析を行う。2年目までに得られた研究成果は積極的に国内および国外の研究集会で発表し、他の研究者からのフィードバックを得る。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] 海洋学会将来構想2021: 新たな手法と問題2021
Author(s)
平井惇也, 宮正樹, 藤木徹一, 吉田聡, 乙坂重嘉, 帰山秀樹, 加古真一郎, 片岡智哉, 松岡大祐, 日高弥子, 杉山大祐, 小嶌不二夫
Organizer
日本海洋学会創;周年記念シンポジウム;日本の海洋学の今とこれから
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