2021 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of swimming behavior of marine rotifers and evaluation of its food value for fish larvae
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20H03063
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
萩原 篤志 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (50208419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 禧珍 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (10823437)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海産ワムシ類 / 遊泳行動 / 行動制御 / 遺伝子発現解析 / カイアシ類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カイアシ類やミジンコ類に匹敵するような活発な遊泳行動をワムシでも発現させ、仔魚用餌料としての価値を向上させることを目的としている。ワムシは、付着行動から遊泳行動に切り替えて悪環境を回避し、悪環境への曝露によって、遊泳速度が増大することが分かってきた。そこで、微量元素として生物の生存に必須であるが、種苗生産場では過剰投与になりがちな鉄(FeSO4)の影響を昨年度検討したところ、温帯性と熱帯性種のワムシ共に、鉄濃度の上昇に伴って遊泳速度も速くなることを確認した。今年度は、同じ観点から非解離アンモニアと亜鉛(ZnCl2)曝露の影響について検討した。非解離アンモニアについては、熱帯性、温帯性のワムシ共に、非解離アンモニア濃度の増加と共に、遊泳速度が1.4-1.5倍速くなった。また熱帯性種が温帯性種よりも非解離アンモニアに高い耐性を示し、その傾向は高い抗酸化作用と脂質合成能で裏付けられた。塩化亜鉛1-2 mg/Lの曝露下で、ワムシの遊泳速度は、温帯性ワムシでは非曝露時の1.4倍(雌)、1.5倍(雄)、熱帯性ワムシでは1.8倍(雌)、1.4倍(雄)に増加した。このとき、温帯性ワムシでは活性酸素と中性脂質が減少し、両性生殖が抑制されてストレス状態にあると判断された。熱帯性ワムシでは活性酸素量とATPレベルの上昇、両性生殖頻度の増大が起こり、強い環境耐性を示し、活力を増大していた。 また、昨年度はエネルギー供与体として原生動物の繊毛運動を活性化することが知られているアルギニンリン酸の投与効果を明らかにしたので、今年度はアルギニンリン酸によるADPのリン酸化で生じるATPや、モータータンパク質(ダイニン)の影響を検討した。その結果、両物質の水中添加によってワムシの遊泳速度の上昇はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、鉄とアルギニンリン酸の添加によるワムシの遊泳機能の向上を見出したのに続き、今年度は亜鉛と非解離アンモニアにも同様の作用があることが明らかになった。そのメカニズムが、ワムシの生息水域の温度帯によって異なり、遊泳速度の増大はストレスからの回避作用である場合と、活力の増大に起因している場合があることが明らかになった。 このうち、鉄添加の影響のメカニズムを明らかにした論文が国際学術誌のAquatic Toxicology (IF=5.778)に、非解離アンモニアの影響を検討した成果がAquaculture(IF=)にそれぞれ掲載された。亜鉛の添加効果については日本水産学会の国際セッションで発表した。以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ワムシの遊泳機能と生理状態を最適化させて活力を増大させた場合と、ワムシの逃避行動を誘導させるような悪環境下においた場合について、アルギニンリン酸、ATP、ダイニン等の添加が、ワムシの繊毛運動による遊泳速度に変化を与えるかどうかについて検討したい。このとき、眼点の機能強化効果が期待されるアスタキサンチンの添加がワムシの光走性に与える影響についても検討を加えたい。
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Research Products
(20 results)