2020 Fiscal Year Annual Research Report
生物時計が調節する魚類の免疫リズムの解明 ~感染症の防除を目指して~
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20H03064
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
河野 智哉 宮崎大学, 農学部, 准教授 (60527547)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 魚類 / 免疫関連遺伝子 / 概日リズム / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、免疫関連遺伝子:インターロイキン1beta (IL-1b)、CCケモカイン (CCL2), リゾチームC (LYZ-C)およびToll様受容体(TLR)-9の発現には、概日リズムが備わっていることを明らかにした。そこで、当該リズムの発振機構を探るために、各遺伝子の転写調節領域に時計遺伝子応答配列(E-Box, RORE)が存在するかを確認した。その結果、全ての遺伝子にE-BoxおよびRORE配列が複数認められ、時計遺伝子による転写制御を受けていることが示唆された。続いて、時計遺伝子(Bmal1/Clock1, ROR)過剰発現細胞を作製し、上記遺伝子の発現が変調するかを調べたところ、Bmal1/Clock1過剰発現細胞においてIL-1b, LYZ-CおよびTLR9遺伝子の有意な発現増加が認められた。また、ROR過剰発現細胞においてCCL2遺伝子の発現が有意に増加した。続いて、モルフォリノオリゴを用いて時計遺伝子の発現を抑制した細胞(KD細胞)における、IL-1b(Bmal1-KD細胞)およびCCL2(ROR-KD細胞)遺伝子の発現を調べたところ、共に発現量が有意に減少することが明らかとなった。これらの結果から、対象とした免疫関連遺伝子は時計遺伝子によって制御された転写リズムを有することが示唆された。 上記の研究と並行して、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を利用し時計遺伝子:Bmal1 / RORノックアウトメダカの作出を試みた。候補ガイドRNAを作成し受精卵へマイクロインジェクションを行ったのち、発生直後の個体を対象にヘテロ二本鎖移動度分析(HMA)によって変異の有無を確認した。対象遺伝子への変異挿入が確認されたため、バッククロスを進めF2世代(ヘテロ)までの作成を完了した。次年度には、F3ホモ個体を作出できる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画した実験は概ね順調に進捗しているが、一部、新型コロナウイルス感染対策などで十分に進めることができなかった。しかしながら、時計遺伝子KOメダカの作出は順調に進んでいる。また、2報の関連学術論文が受理された。以上より、進捗状況に問題はないものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
時計遺伝子KOメダカの作出は順調に進んでおり、半年程度でホモ個体の作出が完了する予定である。作出したKOメダカを用いて、時計遺伝子群の発現リズムの解析を行い、概日リズムの中枢制御機構を解明する。さらに、トランスクリプトーム解析を実施し、リズムを有する免疫分子の網羅的な探索を行う。
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Research Products
(6 results)