2022 Fiscal Year Annual Research Report
赤潮プランクトン休眠細胞の「目覚め」を電気化学操作で制御:電位応答発芽機構の解明
Project/Area Number |
20H03068
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
伊藤 真奈 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (60735900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 龍平 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (10447419)
羽野 健志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (30621057)
坂本 節子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主幹研究員 (40265723)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 沿岸底質 / 赤潮原因プランクトン / シスト / 発芽抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋の底質中に蓄積する有毒プランクトンのシストの発芽は、酸素や光など様々な環境因子によって制御されている。過年度の成果として、底質中に含まれる酸化還元物質および電子伝達物質が発芽応答へ影響をおよぼす可能性が示唆されたことから、今年度は底質電位が低く還元的な環境で発生する遊離硫化物のアレキサンドリウム属(栄養細胞およびシスト)への影響を検討した。その結果、シストは栄養細胞に比べ遊離硫化物に対する感受性が低い傾向が認められたものの、遊離硫化物の曝露がシストの発芽を抑制することを確認した。 また、シストの形成から発芽に至るまでの発現遺伝子の変動を明らかにするため、シストに内在するクロロフィル量を指標とした各ステージのシストおよび栄養細胞を用いたRNA-seq解析を実施した。その結果、シストの休眠期では、光合成に関与する光化学系IおよびIIの他、カルビンーベンソン回路に関わる遺伝子群を筆頭に、解糖系やクエン酸回路、DNA複製など多くの生命活動に関わる遺伝子群の遺伝子発現が減少していた。休眠期を過ぎるとそれら遺伝子発現が徐々に誘導され、発芽につながることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
底質電位と相関が認められる化学種によるシスト発芽への影響を確認したことから、底質環境とシスト発芽の関係性が明らかになりつつある。よって、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
底質の化学種がシストの発芽に影響を及ぼすことが示唆されたことから、その最適濃度を検討するとともに、発芽抑制影響メカニズムをこれまで確立した分析(メタボローム解析等)を用いて検証する予定である。
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