2020 Fiscal Year Annual Research Report
Characterization of memory T cells generated by mucosal vaccinations in teleost fish.
Project/Area Number |
20H03075
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杣本 智軌 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40403993)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粘膜免疫 / 粘膜ワクチン / 腸管免疫 / 経肛門挿管法 / ウイルス / Immunoglobulin T (IgT) |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類のエラ、体表、鼻腔、腸管は、重要な粘膜リンパ組織として知られている。本年度は、最も効率よく長期間抗体産生応答を誘導できる粘膜ワクチン投与法を検討した。ギンブナ造血器壊死ウイルス(CHNV)をそれぞれの粘膜リンパ組織を介する直接投与方法で、3回免疫した後、血中のCHNV特異的IgMの産生応答をELISAによって測定した。抗原を直接腸管に投与する経肛門挿管法は、他の粘膜組織投与法(経鰓投与、経鼻腔投与法、スタンプ法)と比較して、最も迅速に且つ長期間(70日間以上)CHNV特異的IgM産生応答を誘導した。腹腔内注射法と比較しても効率よく二次応答を誘導し、測定した期間すべてで、より高い抗体産生量を示した。経鰓投与、経鼻腔投与法、スタンプ法は、一時的にCHNV特異的IgM量は増加するものの本検出系において有意な特異抗体産生の上昇は確認できなかった。以上の結果から、腸管への抗原投与は、最も効果的に全身性の抗体産生応答を誘導し、かつ長期にわたり免疫記憶を付与しする粘膜ワクチン投与法であることが明らかとなった。今後は、腸管における粘膜免疫に焦点を当て、局所における獲得免疫応機構を解析する。 また、粘膜の獲得免疫応答を調べるためには、IgMだけではなく、粘膜で働く魚類特有の抗体であるIgTの産生応答を確かめる必要がある。そこで、抗ギンブナIgT抗体の作製を試みた。先ず、ギンブナIgTの遺伝子を同定し、大腸菌による組換えタンパク質の作製して、それをウサギに免疫し抗血清を作製した。得られた血清から精製したIgGは、ギンブナ血清および粘液のIgTを検出できることをウエスタンブロッティングおよびELISAで確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた、CHNV特異的IgMの産生応答を指標とした5種類の粘膜ワクチン投与法の比較を実施することができた。この実験は、準備を含めると半年以上かかり、やり直しが利かない飼育実験であったが、大きなトラブルもなく完了できた。その結果、腸管に直接抗原を投与する経肛門挿管法が最も有効な粘膜ワクチン投与法であることを突き止め、来年度以降の研究の方向性を示すことができた。また、IgTを検出する抗ギンブナIgT抗体の作製に成功したことから、来年度以降にIgMに加えてIgTの抗体産生応答も解析することができるようになった。以上にことから、本年度は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、腸管への抗原投与は、効果的に全身性の特異抗体産生応答を誘導する投与法であることが示された。今後は、腸管への免疫投与法に焦点を当て、全身性の免疫応答だけでなく、局所においても獲得免疫が付与されているかを確かめる。同様の条件で経肛門挿管法によりCHNVを投与したギンブナから、腸管を採取し、ホモジネート液中に含まれるCHNV特異的なIgMおよびIgTをELISAで検出する。また、腸管粘膜組織に存在する記憶B細胞の抗体産生応答を確かめるため、最終免疫後から長期間経過したギンブナから腸組織片を採取し、CHNVを添加した培養液中で培養し、培養上清中の特異抗体産生量を測定する。
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