2021 Fiscal Year Annual Research Report
底質変動と魚類の餌資源分布に基づく環境配慮工の価値評価と適応型管理への応用
Project/Area Number |
20H03095
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
前田 滋哉 茨城大学, 農学部, 准教授 (00346074)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
皆川 明子 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (70603968)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 魚類保全 / 環境配慮工 / 底生動物 / 流木 / 土砂水理 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業用排水路は営農活動の基盤施設であると同時に魚類の繁殖,成長,移動経路であるため,生態系に配慮した整備がなされてきた.整備後に土砂の堆積や藻類繁茂等により,魚類の生息環境は変化するが,そのメカニズムが十分に知られていないため,より良い事業の設計が困難である.本研究の目的は農業用排水路の生態環境の核といえる「底質変動」を適切にモデル化することで,物理特性の時空間変化を踏まえた魚巣・魚溜の生態価値を評価することである. 今年度は以下の5つの研究を実施した.(1)魚巣と魚溜が設置されている茨城県の幹線農業用排水路とその接続河川である高橋川を主な対象とし,環境DNA定量解析による魚類のDNAコピー数の時空間分布を推定した.4地点で5回の環境DNA調査により,コイ,ボラ等の遊泳魚の出現場所と時期が地点により異なることが明らかになった.(2)同排水路の魚巣での流れと路床変動の2次元数値計算に基づき,魚巣での泥上げ効果減少率を定量化し,泥上げ量を考慮した適切な泥上げ対象魚巣の選定手法を提案する論文を発表した.(3)同排水路の魚巣への堆砂だけでなく,剥離付着藻類の魚巣内土砂上への堆積過程を数値計算で再現するため,3次元流れモデルと流木移動モデルを用い,魚巣への剥離付着藻類供給実験,魚巣外への剥離付着藻類の排出実験を行った.これにより,魚巣内に剥離付着藻類が留まる条件を分析した.(4)魚類の餌資源となる底生動物を調べるため,同排水路にコドラートを2箇所設定し,3回個体数,出現した科と多様性指数を求めた.並行して,排水路の水位,流量,水温,日射量の10分間隔自動観測を継続し,水理環境要因の考察に用いた.(5)同排水路とその下流の高橋川の一体的な水理解析に基づく魚類生息場評価のため,高橋川の2箇所でADCPによる流速,水深観測と2次元流れ計算に着手した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象排水路の環境配慮工とその接続河川において,魚類相の把握,魚類の餌資源である底生動物と付着藻類の調査が進展し,実態が明らかになってきている.また,2次元流れ・路床変動計算により,魚巣・魚溜のある排水路の管理効率を定量化する手法を提示できた.さらに,魚巣の実態のモデル化を深化するため,剥離付着藻類の挙動の数値計算に取り組んだ.これらより,環境配慮工を多面的に評価するためのポイントがこれまで以上に明確になってきたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
対象排水路-河川系の魚類分布の実態をより詳しく調べるため,魚類の産着卵の調査を行う.水中カメラにより魚類の移動を観測する.また,剥離付着藻類の挙動の現地調査と数値計算での再現に取り組む.
|
Research Products
(6 results)