2020 Fiscal Year Annual Research Report
白色腐朽菌-細菌複合微生物系における高リグニン分解能を誘導する相互作用機構の解明
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20H03114
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森 智夫 静岡大学, 農学部, 准教授 (80536516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 智大 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (10649601)
河岸 洋和 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (70183283) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 白色腐朽菌 / 複合微生物系 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本複合微生物系は、白色腐朽菌Phanerochaete sordida YK-624株菌床に自然界由来細菌を混入させ、継代培養を繰り返し菌叢の安定化を図ったものであり、純粋培養と同程度のリグニン分解活性、若干低い多糖分解活性を示し、表現型として高いリグニン分解選択性を示す。また、本複合微生物系から、アタッチメントアッセイにより菌糸付着性細菌の割合を高めた新たな複合微生物系AAを構築した。この複合微生物系AAは、純粋培養より大幅に低い多糖分解活性と若干低いリグニン分解活性を示し、非常に高いリグニン分解選択性を保持している。これら複合微生物系と純粋培養間でP. sordida YK-624の寒天培地培養時における比較転写解析を行った。GOエンリッチメント解析の結果、両複合微生物系では共通して、ミトコンドリア、ATP合成、細胞壁に関連する遺伝子発現が低下しており、菌糸生育が低下していることが予測された。一方で複合微生物系AAでは、ペルオキシダーゼ活性および酸化ストレス耐性関連遺伝子の発現が大きく上昇しており、酸化ストレスに対する応答の結果として、リグニン分解選択性が向上したものと思われる。 菌糸生育量が低いため、木粉培地からの転写産物量が非常に少なく、木粉培地上での比較発現解析を行うために最適な条件検討を行った。その結果、total RNA抽出に最適と思われる条件を設定することに成功しており、現在木粉腐朽時の比較発現解析を進めている。 複合微生物系では、純粋培養時にはリグニン分解酵素を発現し得ない条件でも、高いリグニン分解酵素活性を発現することができる。様々な培養条件を検討し、複合微生物系と純粋培養系で最も酵素活性の差が大きい条件を見出すことに成功した。この培養条件から相互作用に関連する物質の探索を進め、現在までにリグニン分解酵素活性を向上さしめる物質は、親水性物質ではなく有機溶媒にて抽出可能な有機化合物である可能性を示す結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、新型コロナ禍による自粛期間が数ヶ月に及んでおり、実験等の時間の確保が困難となり、当初の計画よりも遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初の研究計画に基づいて研究を遂行するが、複合微生物系によって補填される白色腐朽菌機能や代謝経路の生化学的な確認の後に行う予定であった機能発現遺伝子過剰発現株の作出については前倒しし、推定段階で遺伝子組み換えを実施する予定。
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Research Products
(1 results)