2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H03116
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊福 健太郎 京都大学, 農学研究科, 教授 (50359783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菓子野 康浩 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (20221872)
内山 郁夫 基礎生物学研究所, ゲノム情報研究室, 准教授 (90243089)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 珪藻 / 光合成 / 集光タンパク質 / 環境適応・応答 / 物質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゲノム情報、遺伝子発現解析、ゲノム編集による変異体解析、構造情報を合わせて、学術的にも産業的にも利用価値があるツノケイソウ(Chaetoceros gracilis)の光環境応答・適応機構の解明を目指すものである。 本研究で構築し、本年度、一般に公開したツノケイソウのドラフトゲノムデータベース(ChaetoBase ver.1)、及び、RNA-seqデータ、Iso-Seqなどの次世代シークエンサ (NGS) データを精査し、ツノケイソウの集光性色素タンパク質 (LHCまたはFCP) 遺伝子の全構成が46遺伝子からなることを明らかにした。さらに、詳細な分子系統解析から、それらLHC (FCP) を新たに6グループ(Lhcf, Lhcq, Lhcr, Lhcz, Lhcx, Lhcr9ホモログ)に分類し、紅色系統二次共生藻類における集光性色素タンパク質の獲得と喪失の過程を考察した。遺伝子情報から得られるタンパク質のアミノ酸配列情報を用いて、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析で得られたツノケイソウの光化学系-LHC(FCP) 超複合体の立体構造に含まれる反応中心サブユニット、および、LHC (FCP) 分子種の同定に成功した。また、夏と秋の屋外培養を含む、様々な環境条件下のツノケイソウからRNAを抽出してRNA-Seq解析を行い、ツノケイソウの集光機能調節に重要と考えられるLHC (FCP) 遺伝子の同定を進めた。そしてそれらを欠損する変異ツノケイソウを作成するべく、ゲノム編集による遺伝子破壊株の作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
屋外培養、および、異なる光条件で培養したツノケイソウからRNAを抽出し、RNA-Seqのデータを得た。さらに、ロングリードの次世代シークエンサーのデータから、ツノケイソウの集光性色素タンパク質(LHCまたは、FCP)遺伝子の網羅的取得に成功し、それらのアミノ酸配列情報をクライオ電子顕微鏡を用いて得られた光化学系-集光性色素タンパク質複合体の立体構造情報に当てはめることができた。それらの情報と、RNA-Seqデータを用いた遺伝子発現解析により、ツノケイソウの光環境適応・応答に必要な遺伝子を推定することができたため、研究は予定通り、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)すでにゲノム編集で作成した変異珪藻の、光合成・増殖特性を評価する。 2)新しく得た珪藻の光化学系のクライオ電子顕微鏡構造を参考に、ツノケイソウの光環境応答・適応において重要な機能が示唆されるFCP遺伝子を新たに推定し、ゲノム編集による変異体作成を進め、得られた変異体の光合成・増殖特性を評価する。 3)上記の変異珪藻について、異なる培養条件で得た細胞からチラコイド膜を調整し、界面活性剤で可溶化後、スクロース密度勾配遠心分離やNative-PAGEによって膜タンパク質複合体を分離し、光化学系ー集光性色素タンパク質複合体の形成状態を解析する。 4)ロングリードシークエンサーを用いて得た、新しいツノケイソウゲノム配列について、遺伝子予測と機能アノテーションを行い、公開中のゲノムデータベースの情報を更新する。
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Research Products
(5 results)