2020 Fiscal Year Annual Research Report
バイオ燃料と有用物質の同時生産を目指したユーグレナの複合的バイオリファイナリー化
Project/Area Number |
20H03119
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中澤 昌美 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (90343417)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嫌気的呼吸鎖 / 発酵 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成生物ユーグレナが有する嫌気下での物質生産能力を開拓することを通じて、①バイオ燃料と有用物質の同時生産を達成し、さらに②多様な真核生物に潜在的に存在する嫌気的呼吸および多彩な発酵経路を探索し、利活用するという、新しい研究体系の基盤を構築することを目指して研究を進めている。本研究の第一年度となる2020年度には、ユーグレナによる嫌気下物質生産能力を広く理解するための研究を進めた。従来、ユーグレナが低酸素・嫌気環境下で貯蔵多糖パラミロンを分解し、その70%以上を脂肪酸脂肪アルコールエステルであるワックスエステルへと変換することが知られている。しかし、ワックスエステルへの代謝フローが大きいため、嫌気下で生産される他の物質に関する具体例やその合成量(分解貯蔵多糖とのモル比等)についてはほとんど明らかにされてこなかった。我々は、これまでに嫌気的呼吸鎖を阻害すると低酸素下でのワックスエステル合成量が低下することを見出してきた。本課題研究において、意外なことに、電子伝達物質の組成改変という方法による嫌気的呼吸鎖の阻害は、低酸素下ATP合成量や低酸素下での生存率へはほとんど影響を及ぼさないことを見出した。このとき、ワックスエステル合成量はコントロールと比べ約35%程度にまで減少していた。そこで、既存の細胞での低い代謝フローでは解析が困難であるワックスエステル以外の低酸素下代謝産物を同定することを目指した。有機酸分析システムによる解析および受託メタボローム解析により細胞内および培養上清の各種化合物の同定、定量を行い、電子伝達阻害時に低酸素下で蓄積が変動する代謝産物を同定することに成功した。アミノ酸および有機酸の変動が顕著であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素下で、電子伝達系の阻害を行うことにより変動する、複数の代謝物を同定する、という当初の第一目的を達成した。本研究により導入した有機酸分析システムも順調に稼働しており、研究の進捗はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に、電子伝達阻害時に低酸素下で蓄積が変動する代謝産物として見出した化合物情報をもとに、それらの低酸素下代謝経路をRNAi法を用いて同定する。これにより、当該代謝経路の低酸素下代謝における役割を明らかにすることができるとともに、今後の研究展開の中で、ユーグレナ内で過剰発現することによる代謝フロー向上にもつなげることができる。ユーグレナ過剰発現系については、現在改良を進めており、研究代表者により論文発表を予定している。 本課題研究では、低酸素下でのユーグレナによる物質生産を「バイオリファイナリー」として活用することを目指している。有機酸分析システムの導入により、TCA回路をはじめとした細胞内の主要な有機酸の測定が可能となっている。2020年度の受託メタボローム解析により、有機酸以外にアミノ酸等の動態を追う必要があることが明らかとなった。これらの化合物の測定系を構築し、代謝改変細胞における各化合物の動態を日常的に追跡することができる環境を早急に構築したい。
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