2021 Fiscal Year Annual Research Report
バイオ燃料と有用物質の同時生産を目指したユーグレナの複合的バイオリファイナリー化
Project/Area Number |
20H03119
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中澤 昌美 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (90343417)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嫌気的呼吸 / 発酵 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの代謝解析では、主にRNAiによるノックダウンを実施してきたが、バイオリファイナリーへの活用を視野に入れると、安定的に遺伝子ノックアウトを行うことが望ましい状況であった。そこで、本研究の2年目にあたる本年度に、研究グループへ、ユーグレナを材料として用いたCRISPR/Cas9ベースのノックアウト技術を導入し、株の獲得から解析に向けた研究スキームを構築することとした。その結果、従来ノックダウンによって「高い生存を保ちながら、嫌気状態でワックスエステル以外の代謝産物を生産」することを明らかにしてきたrquA遺伝子をノックアウトした株の獲得に成功した。本ノックアウト株は、ノックダウン株と同様に嫌気状態での高い生存を保ちながら、そのワックスエステル合成量はコントロール株の20%程度にまで低下していた。さらに、嫌気下で分解される貯蔵多糖からワックスエステルへの変換率は10%未満まで低下しており、嫌気下でのワックスエステル以外の代謝産物合成が上昇している株が獲得できた。本株を嫌気培養し、培養上清中の有機酸量を測定したところ、発酵産物のひとつとして乳酸の量が元株の20倍以上に増加していた。しかし、生成された乳酸量は、嫌気下で分解された貯蔵多糖量から換算したモル比で1.5%に満たない量であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初に準備していたRNAiによる発現抑制株は、株の安定保持が困難という問題があったが、本年度、RNPを用いたゲノム編集によりノックアウト株の作製を実現したことで、今後の研究期間における安定した解析状況の提供が可能になるとともに、バイオリファイナリーとしての実用を視野に入れた場合に有望な基準株の提供が容易になった。引き続き、ユーグレナの嫌気代謝の解明と物質生産能の解明を進めるための基盤を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、嫌気的呼吸鎖欠損株の作製により、ユーグレナの嫌気代謝の解明と物質生産能の解明を進めるための基盤を構築することができた。しかし、現在までに、嫌気下で分解された貯蔵多糖がどのような炭素化合物に変換されたかの全容に迫ることはできていない。化合物同定ターゲットを広げた解析を今後進めていく。また、バイオリファイナリーを目指すにあたり、代謝改変技術をさらに広げることが必要であるため、ゲノム編集技術と組み合わせた遺伝子ノックイン技術についても検討を進める予定である。
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